1週間の入院
1週間の入院から帰ってきた。命にかかわる病気じゃないから気楽なものだったけど、病院に閉じ込められベッドに寝ているのは、それだけで気が滅入る。ガキのころ、急性腎炎で2カ月入院したときのことを思い出していた。あのころに比べ入院生活は格段に快適になったけど、安静にして他人に看護されるというのは自分がどんどん幼児化していくような気がする。やはり、好きなときに好きなところに自分の足で行って、好きなことをやる自由と気ままさは何ものにも代えがたい。
ベッドでは必要あって司馬遼太郎『「明治」という国家』を再読していた。明治維新によって成立した、とにもかくにも近代国家を、司馬流の上空遙かな高所からの視線で、しかし愛情をもって論じたもの。そのなかに、「理想に近い社会」として、こんな記述があった。「兵隊が威張らない社会、兵隊がひっそりしている社会、そして福祉がゆき届いた社会、誰でもその社会に参加したいと外国人が思う社会」。
兵隊について二度繰り返されているところに司馬のこだわりを感ずる。戦前の「重い国家」のもとで軍隊に招集され、旧満洲で戦車隊小隊長として戦争を体験した司馬は、戦後の「軽い国家」と、そのもとでの安穏な暮らしを一市民として愛していた。戦後ある時期までの(たぶん田中角栄登場以前の)保守党政治を良しとしていたように思われるのは、そうした体験や思想と無縁でないだろう。
司馬遼太郎が亡くなって21年。国民の格差を広げる経済政策が取られ、北朝鮮への武力攻撃をほのめかす米国大統領を全面的に支持する首相がいて、北の脅威から日本を防衛すると声高に語られ、特定の外国人や性的少数者、生活保護受給者へのヘイト・スピーチが路上でウェブで公然と語られる社会になったことを、彼が生きていたらどんなふうにながめるだろう。
そんなことを、季節外れの寒さに見舞われた東京の雨空を見ながら考えていた。入院前に期日前投票をすませたので、明日は外へ出ずに結果を見守るだけ。ところで、術後の経過はまったく問題ないのだが、安静にして血流が滞ったせいか病院で通風を発症してしまった。回遊をやめると代謝がうまくゆかず死んでしまうマグロみたい。自分は回遊魚なんだな(笑)。
Comments
雄さん、こんにちは。入院されていたと知り驚いています。
もう大丈夫でしょうか? お大事になさってくださいね。
選挙結果が気になります。。
Posted by: 真紅 | October 22, 2017 07:08 PM
ありがとうございます。あと数日休めば、また映画を見に行けると思います。まずは「あゝ、荒野」後篇ですかね。
各局の選挙特番が始まる午後8時に結果予測が出て(しかもかなり正確なので)興ざめですね。
Posted by: 雄 | October 22, 2017 09:12 PM