福島でJアラートに遭遇
福島県の裏磐梯・五色温泉に滞在していた8月29日朝6時すぎ、スマホがいきなり大音量で鳴りだした。なにごとかと思って見るとJアラートというやつで、「北朝鮮がミサイルを発射した模様。頑丈な建物や地下に避難してください」というもの。屋外の防災無線も同じことを放送しはじめた。ミサイルといっても日本に狙いを定めて撃ったわけではあるまいと思ってTVをつけると、「上空を通過した」との画面。まだ眠かったので、もうひと眠りしようと寝てしまった。滞在していたホテルの廊下も屋外も、しんと静まりかえったまま。人があわてている様子はない。
2時間ほどして起きTVをつけたら、「避難指示」が出た北海道や東北の街が映っていた。朝早かったこともあり、人々が避難している様子はなかった。「発射」から「上空通過」まで十分ちょっとだから、「頑丈な建物に避難」と言われても動きようがなかったというのが正直なところだろう。でもJRは東北・秋田新幹線を含めて北海道・東北の全線をストップさせ、学校を休校にしたところもあった。政府と公共部門が前のめりで、国民はどうしたらいいか戸惑っている。
そもそも、ミサイルが日本を標的にして発射されたのか、太平洋上のどこかを標的にして日本の上空を通過するのかは、まったく意味合いが違う。前者なら「避難指示」は当然のことだけど、後者なら、今回北海道・東北の一千万人以上に「避難指示」が出たわけだが、政府は本気で避難させようとしたのか。そうは思えない。
政府は北朝鮮のミサイル発射を「完全に把握」していたそうだし(首相も前夜から珍しく公邸に泊まっていた)、防衛相もすぐに「上空通過」と判断した。現在、日本と北朝鮮の間に対立や緊張があるにしても、明日にでも戦争が始まるという緊迫した状態ではまったくない。現在の情勢で北朝鮮が実際に日本を標的にミサイルを発射することがないのは政府は百も承知だろう(日本が集団的自衛権を発動してグアム標的のミサイルを攻撃しない限り)。「攻撃」ではなく「上空通過」なら、ありうるのはミサイルが不具合を起こして日本の領土に落ちてくる可能性。(その可能性は論理的にはありえても、現実にはどうか。ミサイルの故障は打ち上げ直後と大気圏突入時に多い。「上空通過」しているミサイルが日本の領土に落ちる可能性は天文学的とまでは言わなくても、ほとんどないはずだ。──カッコ内の文章は後で追加)そんな不測の事態に対して、実態として自衛隊が対処できないのは多くの人が認めている。
そう考えてみると、ミサイルを口実にJアラートを発動し、国民の危機感をあおる、というのが政府の目論見なんだろう。安倍政権が考えそうなことではある。北朝鮮は今後も太平洋にミサイルを飛ばすと公言しているようだけど、仮に関東や関西の大都市圏上空を飛ぶことになっても政府はJアラートを出すつもりなんだろうか。金正恩の危険なゲームは許されないけど、それを利用して危機感をあおろうとするこの国の政府も危ないことをやろうとしている。
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