« 懐かしい映画館 | Main | 梅咲く »

January 30, 2017

『ホワイト・バレット』 超絶スローモーション

Photo
Three(viewing film)

『ホワイト・バレット(原題:三人行)』は、10分くらいありそうな最後のスローモーション銃撃戦のために、それまでのすべてがある。三人の主人公はじめあらゆる人間関係や心理戦、物語の伏線がそこで炸裂する。驚嘆し、笑える。見ていて惚れ惚れ。さすが、ジョニー・トー。

香港ノワールといえばまずこの人の名が挙がるジョニー・トーの映画には、たいてい二つの要素が入っている。ひとつは男と男の友情と対立の物語。もうひとつは、長回しやスローモーションを織り込んだ斬新なアクション。そんな二つの系が分かちがたくからみあっている作品が多い。この映画は、そのうちアクションの要素を全面展開させたもの。

宝石強盗団グループのシュン(ウォレス・チョン)がチャン警部(ルイス・クー)らに追いつめられ、自ら頭に銃弾を撃ち込んで病院にかつぎこまれる。脳外科医のトン(ヴィッキー・チャオ)はシュンを手術しようとするが、彼は手術を拒否する。チャン警部は、シュンの拒否は仲間が救出にやってくるのを待つ時間かせぎと判断し、病院に包囲網を敷いて強盗団を待つ……。

前半はアクション場面がほとんどなく、病院の手術室や病室での言葉と視線のやりとりでストーリーが語られる。手術を拒否したが発作が起きる不安は残るシュンと、医師として手術を主張するトンのやりとり。医療を優先するトンと捜査を優先するチャン警部の対立。シュンとチャン警部の、互いに相手の裏を読もうとする探り合い。

そこにサイド・ストーリーが絡む。トン医師の手術は医療ミスだったと訴える入院患者。やたら院内を歩き回って引っ掻き回す、トー映画の常連ロー・ホイパン演ずる入院患者。やはり常連のラム・シュー演ずる間抜けな刑事。このあたり、緊張と笑いをうまく織り交ぜるトーの職人芸は絶品。

そして最後の銃撃戦がやってくる。CGも使いながら、すべてスローモーションで描写される10分近く(多分)が圧巻。これまでもトー映画で銃弾がスローモーションになったりすることはあったけど、これだけ長いのは初めてじゃないかな。長回しもあって、どんなふうに撮影したんだろう。見惚れてしまう。

この映画、香港だけでなく大陸でも公開され、トー映画として最高の興収をあげたという。自分のスタイルを徹底させながら、映画もヒットさせる。改めてジョニー・トーのしたたかさに脱帽。

|

« 懐かしい映画館 | Main | 梅咲く »

Comments

こんにちは。
私もこの作品の、何もかもを最後の銃撃戦に(多少強引にでも)持ってくる、あの潔さがたまらなく好きです!そしてホントホントおっしゃる通り、見惚れる銃撃戦でした!!

Posted by: ここなつ | January 30, 2017 06:11 PM

コメントありがとうございます。
銃撃戦はもちろんですが、そこまでが単に伏線を張るだけじゃなく、緊張あり笑いありのドラマになっているのがすごいですね。

Posted by: | January 31, 2017 10:15 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 『ホワイト・バレット』 超絶スローモーション:

» 17-008「ホワイト・バレット」(香港・中国) [CINECHANが観た映画について]
先生、足が動くよ!  銃弾を頭に受けた強盗団の一人チョンが病院に運び込まれてくる。担当する女医のトンが銃弾の摘出手術を行おうとするが、チョンは暴れてこれを拒否する。  チャン警部は、そんなチョンを厳重に監視しつつ一味の情報を聞き出そうと迫るが。(「allcinema」より)... [Read More]

Tracked on January 31, 2017 01:04 AM

» ホワイト・バレット [象のロケット]
香港の大病院ビクトリア医院の女性脳外科医トンは、後遺症が残ってしまった患者ハンから非難され、心を痛めていた。 そんな時、刑事が発砲した銃弾を頭に受けた強盗事件の容疑者シュンが搬送されてくる。 香港警察のチャン警部たちは、シュンから事情聴取しようとベッドを取り囲んでいた。 強盗仲間の助けを待つため手術を拒否するシュンを、トンは説得しようとするが…。 サスペンス・アクション。 ... [Read More]

Tracked on February 05, 2017 10:15 AM

« 懐かしい映画館 | Main | 梅咲く »