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January 23, 2017

『静かなる叫び』 冷え冷えした風景

Polytechnique
Polytechnique(viewing film)

「未体験ゾーンの映画たち 2017」のタイトルで未公開映画63本が特集上映されている(~3月31日、ヒューマントラスト渋谷)。ほとんど見ることのないホラーが多いけど、気になるクライム・アクション映画も何本かある。なかでいちばん見たかったのがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が2009年にカナダでつくった『静かなる叫び(原題:Polytechnique)』。この作品の次につくった『灼熱の魂』が国際的に評価され、監督はハリウッドに呼ばれることになった。

1989年にモントリオール高等技術専門学校(polytechnique)で銃乱射事件が起こり、14人の女子学生が殺された。『静かなる叫び』はその事件を映画化したもの。銃を乱射した学生と、犠牲になった女子学生2人、友人の女子学生を見殺しにしたことで罪責感にさいなまれる男子学生の4人を中心に事件が描かれる。

映画がはじまって数秒、観客になんの情報も与えられないまま、学生がコピー機に群がるホールでいきなり銃が乱射される。血を流した学生が逃げまどう。見る者は、なにがなんだかわからないまま心臓をぎゅっと掴まれる。

そうしておいてからカメラは、自室で銃口を口にくわえ自殺のシミュレーションをした後、銃を隠し持って激しく雪が舞うなかを大学へ向かう男子学生の行動を追う。理由は説明されないが男はフェミニズムを憎んでいて、その憎悪が理系女子学生に向けられる。同じ朝、ルームメイトである2人の女子学生もインターン試験を受けるひとりのファッションをチェックしながら大学へ向かう。銃を持った学生が授業に乱入し、女子学生だけを残し、教師と男子学生を教室の外に追い払う。2人の友人の男子学生も、ためらいつつも銃を持った男に逆らえない。そして惨劇が起こる。

ともかく緊迫感が半端じゃない。事件へ向かう冒頭、教室の内と外での乱射、女子学生を救おうとする男子学生の行動などを時間を行きつ戻りつ、さらに事件後の男子学生が自分を苛む姿や生き残った女子学生のその後も挿入しながら、何本もの糸を織り上げるように縒ってゆく。長編映画3本目とは思えないサスペンスの才能。ノイズのような音が画面の背後に流れて緊迫感をいよいよ高める。

そして監督の映画の多くに共通する、北国の都市の冷え冷えした風景がここでも印象的だ。惨劇は、窓の外に雪が激しく降る室内で静かに進行する。モノクロームであることも、寒々した空気を強調している。

この映画は犠牲者に捧げられているが、ハリウッドはそのテーマでなくサスペンスの才に注目したんだろう。とはいえヴィルヌーヴ監督は職人としてでなく、自分の「質」をハリウッドでも保持することで『プリズナーズ』『ボーダーライン』という秀作を生みだした。今年秋に公開されるという『ブレードランナー』続編が楽しみだ。


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