アンジェイ・ワイダを悼む
(『夜の終りに(原題:Niewinni Czarodzieje)』)
アンジェイ・ワイダが亡くなった。
学生時代に見た2本のワイダ、『灰とダイヤモンド』と『夜の終りに』は生涯に見た映画のベスト10をつくれば2本とも入れるかもしれない。
『灰とダイヤモンド』は言わずと知れた名作。ズビグニエフ・チブルスキーの反革命テロリストがコミュニストの党幹部を殺し、その身体を受け止めた瞬間、背後で打ち上げられる花火。死んだ仲間の名前を呼びながらウオッカの一杯一杯に火をつけてゆく。死ぬ直前、白いシーツの洗濯物についた自分の血の匂いをかいでみる。忘れられないシーンがいくつもある。1ショットの無駄もなく、完璧な映画だと思った。社会主義国で製作されながら、地下抵抗グループから反革命に身を投じたテロリストを主人公に、その苦さが心に迫る。
『夜の終りに』は対照的な青春映画。昼間は医師、夜はジャズのドラム奏者である主人公の一夜の物語。可愛い娘と夜を過ごすが、何も起こらず白々と朝が明ける。その空虚な感じに若い自分は共感した。女優のクリスティナ・スティプウコフスカの映画はその後公開されなかったが、50年後のいまも名前をすらすら口にできる。
両極端の2本のモノクロ映画、ワイダの懐の幅は広く、奥は深かった。合掌。
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