「大久保喜一・須田剋太 師弟展」へ
司馬遼太郎『街道をゆく』の挿画を描いた画家・須田剋太と、須田さんが画家になるきっかけをつくった大久保喜一の「師弟展」が故郷の鴻巣で開かれている(~10月29日、埼玉・鴻巣市吹上生涯学習センター)。
大久保喜一は須田さんが通った熊谷中学の美術の先生。東京美術学校(東京芸術大学)で黒田清輝らの指導を受けた。帝展に入選した「机上フラスコ」など10点が展示されている。外光が入る室内での静物や人物が多い。理科の実験室らしい教室で、机におかれたフラスコが窓からの光を受けて輝いている。大久保は学校外でも坂東洋画会を結成し、須田さんも参加した。
須田剋太の作品は46点。1970~80年代の油絵、グワッシュが多い。僕はこの時代の須田さんを知っているので、当時の絵はけっこう見ている。それ以外に戦前の若いころの作品が3点あって、これは初めて見た。
中学時代に描いた「道」。その後の須田さんを知っているせいか、すでに写実をはみだすものがあるような気がする。画家になる決心をし、吹上から浦和に移った時代の「ざくろ」。ごろんと放り出された果実に、写実にこだわらず須田さんの目にはこう見えているんだと納得させるものがある。浦和から奈良に移った時代の「鷲」(1940頃)になると強い生命力を感じさせる、まぎれもなく須田剋太の絵。
鴻巣には「須田剋太研究会」があり、須田さんの作品数百点が保存され、毎年のように展覧会が開かれている。須田さんも喜んでいるだろう。
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