一葉旧宅からロシア民謡の日
雨のなか、本郷へ。仕事に関連して樋口一葉の旧宅跡を見にいった。本郷は起伏が多い。菊坂から一本裏へ入った菊坂下道。下道の反対側は鐙坂で両側が高くなっており、谷を走る道であることがわかる。江戸から明治初めにかけて、台地は武家や富裕層が住み、低地には細民が暮らしていた。菊坂下道は当時の地割りをそのまま残していて、人ひとりやっと通れる道や行き止まりの道もある。
下道から細い路地を入った奥に、一葉が住んだ旧居跡がある。階段を上ると鐙坂に通じている。手前の井戸は一葉も使ったものという。一葉はここに18歳から21歳まで住み、針仕事で家族を養いながら小説を書きはじめた。
ここから5分ほど歩いた西片町の崖下には、一葉が最後に住み結核で亡くなった旧居跡もある。谷底と崖下に住んだ一葉。そういう場所と一葉の小説とは深くつながっている。
夜は本郷(元富士町)の喫茶店で「うたごえ喫茶ナイツ!」。
友人のソプラノ歌手、室井綾子さんはじめ、クラシック畑の声楽家5人の出演。みな「ロシア声楽曲研究会」のメンバーだそうで、ロシア語と日本語で「黒い瞳」「カリンカ」などおなじみの曲を歌う。
団塊に属する小生あたりが、時代現象としての「うたごえ喫茶」を体験したいちばん若い世代だろうか。大学に入りたてのころ、先輩に誘われて新宿の「ともしび」に行ったことがある。甘く物悲しい旋律のロシア民謡はよかったが、声をそろえて歌う雰囲気になじめなくてそれきり行かなかった。ロシア民謡をこんなにまとまって聞くのは、それ以来かも。
室井さんがひとりで歌った「モスクワ郊外の夕べ」はジャズでもときどき演奏されるけど、澄んだ歌声に感情がこもって聞きほれました。
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