2本のフィリピン映画
Kinatay & Captive(viewing film)
面白いフィリピン映画をDVDで二本見た。ブリラーテ・メンドーサ監督の『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド(原題:Kinatay)』と『囚われ人(原題:Captive)』。
『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』は、マニラの警察学校に通う男が警察官のギャング組織に取り込まれて殺人の手伝いをさせられ、のっぴきならない状況に追い込まれる一夜を描いた作品。
新婚で子供が生まれたばかりの主人公が警察官ギャングのミニバンに乗せられ、麻薬代金を払わなかったダンサーを拉致して犯罪の匂いがしてくるのに逃げようとして逃げられず、不安におののく姿が手持ちカメラの不安定な映像で捉えられる。マニラの歓楽街や郊外の夜景など、画面はほぼ暗い。ダンサーを姦して殺し、バラバラにするなど描写は過激。フィリピン・ノワールとでも言ったらいいのか。「キナタイ」はタガログ語で虐殺の意。2009年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞した。
『囚われ人』は、2000年にイスラム原理主義武装ゲリラ「アブ・サヤク」がリゾートで20人の外国人・フィリピン人を拉致して身代金を要求し、1年以上にわたって人質を連れまわした事件の映画化。
武装ゲリラと人質の一行は政府軍に追われて熱帯雨林を転々とする。鮮やかな緑と、そこで繰り広げられる血なまぐさい戦闘の対照がすごい。蛇が鳥を襲ったり、兵士が蜘蛛を戦わせたり、熱帯の動物が大写しで挿入される。ゲリラと人質が行動を共にするなかで、いろんな人間関係が生まれてくる。人質のフィリピン人看護師がゲリラと半ば強制的に結婚させられる。イザベル・ユペール演ずる人質と少年兵士の間に感情の交流が生まれかける。ゲリラは時に住民から食事を供され、礼儀正しく謝礼を払ったりもする。かと思うと、ケガをし足手まといになった人質をあっさり殺しもする。
そんな熱帯雨林の逃避行(に見える)を、メンドーサ監督はここでも手持ちカメラの大胆な映像で物語的な高揚もなく坦々と描き出す。映画は、イザベル・ユペールが救出されたところでぶつりと終わる。
2本とも、単純な善悪や正義で割り切れない人間の行いを見つめている。フィリピン映画は見たことなかったけど、楽しみがまたひとつふえた。
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