『レジェンド 狂気の美学』 トム・ハーディ賛江
この映画、楽しむ視点を間違えた。『L.A.コンフィデンシャル』『ミスティック・リバー』の名脚本家ブライアン・ヘルゲランドが監督としてつくった映画だから見にいったんだけど、その点では期待はずれというか、いささか不満の残る内容だった。でも、主役のトム・ハーディを楽しむつもりなら、間違いなく満足できる。
トム・ハーディの映画はよく見ている。デビュー作『ブラックホーク・ダウン』や『レイヤーケーキ』はまったく印象にないけれど、『インセプション』や『裏切りのサーカス』で記憶に残り、『欲望のバージニア』でいい役者だなあと感じ入った。その後『ダークナイト・ライジング』『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』『チャイルド44』『マッド・マックス 怒りのデスロード』『レヴェナント』と立てつづけに面白い映画に出演してる。僕が好むクライム、アクション系統の映画によく出てるんですね。いま、いちばん旬の役者。イギリスでは舞台俳優としても活躍しているそうだ。
もっとも日本で女性に人気があるかといえば、そうでもなさそう。相手を見つめる眼差しや厚い唇が男の色気を感じさせるけど、いまの日本では男も女もロリコンふうな幼さが人気だから、トムみたいに成熟した濃い男はだめなんだろう。
『レジェンド 狂気の美学(原題:Legend)』で演ずるのは1960年代ロンドンの伝説的なギャング、クレイ兄弟。トム・ハーディが1人2役をこなすのが見どころ。
ロンドンの下町イーストエンドに生まれたレジ―とロンのクレイ兄弟は暴力でのしあがった。政治家やセレブともつながり、街を支配する。兄のレジ―は頭脳明晰。アメリカ・マフィアと組んでカジノに手を広げる。子分の妹フランシス(エミリー・ブラウニング)に惚れ、フランシスに「犯罪と手を切って」と懇願されナイトクラブの経営に力を入れる。他方、弟のロンはゲイであることを公言し、いつ切れるかわからず、切れれば手がつけられない暴力派。兄のレジーが収監されている間にナイトクラブをゲイのクラブにしてしまったりする。対立するギャングを容赦なく殺す。
兄のレジーを演ずるトムは、いってみればいつものトム・ハーディ。それに対して弟のロンに扮するときは眼鏡をかけ、オールバックに髪をなでつけ、トム・ハーディらしさを極力殺している。神経質そうに顔を歪め、発する言葉もぎこちない。クールな暴力と激情的な暴力。戦略家と制御不可能な男。常識家と変わり者。フランシスを愛する男とゲイ。兄と弟の対照的なキャラクターを演じ分け、これ見よがしでなく、一人二役をほとんど感じさせないのがすごい。言葉は兄弟そろって、dayを「ダイ」と発音するロンドンの労働者階級訛り。2人が取っ組み合いをするシーンはどんなふうにつくったんだろう。
映画はフランシスの独白による叙事的な手法。叙事的な語り口は年代記など長大な物語を語れるが、ひとりの登場人物に思い入れしにくくなる。当時のポップスが絶えず流れているのも気になり、そのせいもあって映画にいまひとつ入りこめなかった。
1960年代ロンドンのイーストエンドの街やナイトクラブ、ファッション、車など(僕は実際に知らないけど)の再現に力がそそがれている。ロンドン子なら懐かしさに涙するだろうな。
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Comments
こんにちは。
そうなんです!主役のトム・ハーディを満喫する作品なのだと思いました。だからとーっても万属して鑑賞し終えました。
でも、ギャング同士の裏切りと暴力もそこそこ上手に描かれていたと思います。
TBさせていただきます。
Posted by: ここなつ | July 06, 2016 04:29 PM
男から見てもかっこいいですもんね。
東ロンドンの労働者階級訛りをしゃべってましたが、彼自身は西ロンドンのインテリ家庭の生まれですから、演じてるんですね。かっこいいだけじゃなく、そういうところもすごい。
Posted by: 雄 | July 07, 2016 05:08 PM