DUGのけむり草
最近また新宿のDUGに行くようになった。また、というのは40年以上前、20代のころよく行っていたから。もっとも靖国通りに面した現在の店でなく、紀伊国屋書店を裏口に出た隣にあった時代。重いドアを開けるとジャズがどっと流れてきて、たばこが煙る狭い階段を下りてゆくのが快かった。カウンターでコーヒーを飲みながら女友達を待った記憶は今もときどき蘇って胸がちくちくする。
最近よく行くようになったのは、新宿で時間があるとき寄っていたブルックリン・パーラーが混みだし、入れないことが多くなったせい。どちらの店もそのときの気分で、お茶でもアルコールでも頼める。ブルックリン・パーラーはブルックリンの地ビールが飲めるのがいいのだが、若い子が何人も入口で待っているのを見てあきらめ、そうだ、DUGがあったじゃないかと久しぶりに歌舞伎町方面に足が向いた。
今日は映画を見た帰り。小腹が空いたのでチョコレート・ブラウニーを食べながらレッド・ガーランドを聞いていると、店のオーナーで写真家の中平穂積さんが大きな植物をかかえて入ってくる。雲のように、あるいは煙のようにもわっとした薄い灰緑の花。中平さんが自ら壺に活ける。店の雰囲気に合っているのはさすが。けむり草というそうだ。その名前とたばこの煙を連想したことから40年前の煙ったいDUGを思い出した。
Comments