加仁湯と八丁湯
奥鬼怒温泉郷の加仁湯と八丁湯に行ってきた。
東武・鬼怒川温泉駅からバスで110分、さらにマイクロバスで20分。鬼怒川の源流近い鬼怒沼山の谷あいに四つの一軒宿が点在している。鬼怒沼山を越えて西へ行けば尾瀬沼、北へ行けば福島県桧枝岐になる。
加仁湯は山奥の宿にしては大きな建物だった。
加仁湯は五つの源泉を持っている。四つは白濁する硫黄泉で、ひとつは透明の湯。この「第三露天」はふたつの硫黄泉が混合されている。片側はぬるめで、片側は熱め。硫黄泉といっても草津や万座のような強い湯でなく、肌に柔らかい感じ。白濁の度合いも草津・万座みたいなとろとろの白ではない。湯治ではないから、こちらのほうがゆっくり浸かっていられる。
対岸の崖が迫っている。標高1300メートル、鬼怒川温泉では見事だった紅葉はここでは終わり、ブナ、ナラ、カエデは落葉している。急な崖の獣道を2頭のカモシカが歩いていった。
河原につくられた「第二露天」(ちなみに、よくポスターに使われる「第一露天」は女性専用。いちばんいい湯が女性専用というのは、時代というか。第一と内湯以外は混浴)。
源泉を入りくらべられるよう小さな風呂が五つ並んだ露天もある。硫黄泉は白濁の度合い、匂いがそれぞれ。体が見えないほど白濁した湯、青味がかった白濁の湯。、半透明の湯。硫黄臭に加えて鉄のような匂いのするのもあった。肌にまつわる感じもなめらかなのと、こするときゅっきゅとするものと。透明な湯は熱かった。
ロビー脇の囲炉裏部屋。ここへ来る途中のバス停に「マタギの里」があった。マタギが捕ったクマ、鹿、カモシカ、キツネ、テンが飾られている。肉は料理に、皮は敷物に。
加仁湯から10分ほど河原の遊歩道を下ると八丁湯がある。
八丁湯は透明。この湯は熱かったけど、滝の脇にある露天ともうひとつの露天はぬるめで、お湯も柔らか。加仁湯と八丁湯は湯質が違うし散歩がてら行けるので、どちらの宿に泊まった客もたいてい二つの湯に入る。
八丁湯はログハウスの部屋もあって若い人も多い。加仁湯は昔ふうの宿で団体も湯治客も来る。
もう一軒の宿、日光沢温泉のほうへ歩いていくと、下流の常総市で堤防が決壊した9月の大雨によって道路が崩れ土嚢が積まれていた。崖を覆う工事をしている直下の遊歩道が崩落したという。そういえば、鬼怒川温泉駅からのバスに乗っているときも、路肩が崩れて片側通行になっている個所があった。
あの日は激しい雨が1日半つづき、500ミリが降ったという。日光沢温泉では橋の上まで水がきた。
バスの終点、女夫淵の橋の上から、影の自写像。女夫淵には温泉があったが、東日本大震災で泉脈が変わって温泉が出なくなった。ホテルは廃業し、今は更地になっている。
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