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September 04, 2015

『夏をゆく人々』 遠い夢のような

Photo
The Wonders(viewing film)

イタリア映画『夏をゆく人々』の原題は「Le Meraviglie」。英題が「The Wonders」となっているように、日本語なら奇蹟とか不思議と訳される言葉らしい。「不思議の国のアリス」のイタリア語書名にこの言葉が使われていることから、なんとなく語感がわかるような気もする。

ローマ帝国以前に栄えたエトルリアがあったトスカーナ地方。人里離れた一軒家で暮らす養蜂家一家のひと夏の物語だけれど、家族の日常を穏やかな視線で見つめた温かな映画というだけでなく、そこに古代エトルリアの歴史や幻想を重ねて、どこか遠い夢のような雰囲気をたたえているのが素敵だ。32歳の女性、アリーチェ・ロルヴァル監督の長編2作目。

10代の少女ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は養蜂家の父ヴォルフガング(サム・ルーウィック)の仕事を手伝って、父以上に仕事ができるようになっている。家には母と3人の妹、同居人の女性ココがいる。 父は頑固一徹だが、彼なりに娘たちを愛している。

ある日、湖水浴に出かけた一家は、エトルリアをテーマにした「不思議の国」というテレビ番組の収録に出会う。古代王国の女王に扮した司会者ミリー(モニカ・ベルッチ)に魅入られたジェルソミーナは番組に出たいと訴えるが、父はにべもない。同じ頃、悪さをした更生のためマルティンという少年が一家に預けられる。父はマルティンに仕事を手伝わせ、ジェルソミーナは父にもマルティンにも複雑な感情を抱く……。

家族の小さな出来事を淡々と重ねてゆくリアリズムのタッチに、少しずつ幻想的な味も加わってくる。

父は有り金をはたいて、かつてジェルソミーナからねだられた生きたラクダをお土産に買ってきてしまう。母がもう離婚すると騒ぐなか、がらんとした庭につながれたラクダの周りをジェルソミーナや妹たちが無言で走り回るロングショットが素晴らしい。マルティンは口笛の名手で、テレビ番組の収録でジェルソミーナは彼の口笛にあわせ蜜蜂を魔法使いのように操って見せる(上のポスターはその場面)。エトルリアの墓地が残る島に残されたマルティンとジェルソミーナが夜を過ごす洞窟の壁に2人や生きものの影が揺れる。

言葉少ない少女の心の揺れを映し出すように、夏の光を受けて波立つ湖面や、蜜蜂の群れる木立、地味が豊かではなさそうな畑、古びた家の染みだらけの石壁といった風景が素晴らしい。

ラストシーン。マルティンと洞窟で夜を過ごしたジェルソミーナが朝、屋外のベッドで雑魚寝している家族の元へ帰ってくる。父は「場所はある」と声をかけ、ココが「家には秘密があってもいいわ」とつぶやく。取り壊されることになった(らしい)家のショット。家族と家と風景が一体になって、映画は終わる。

ご贔屓モニカ・ベルッチは特別出演ふうながら魅力的。金髪のウィッグを脱いで地の黒髪を見せ、素顔になってジェルソミーナと話すショットがいい。この夏は、この作品とトルコ映画『サイの季節』と、彼女の映画を2本も見てしまった。

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