『ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション』 合言葉はコルトレーン
Mission Impossible:Rogue Nation(viewing film)
シリーズ化されたアクション映画はむずかしいこと言わずに楽しめるのがいいとこ。だけど、バットマンも007もここ数作は気鋭の監督が起用されたため作家的な匂いのある映画になり、完成度も高くなった。
それはそれでいいけれど、やはりお気楽に見られるのもほしい。その点、『ミッション・インポッシブル』シリーズはエンタテインメントに徹している。しかもCGをできるだけ排し、トム・クルーズが相変わらず身体を張っているのがいい。
予告で大宣伝している飛行機にぶら下がるシーンは、本筋とは関係ないイントロ。滑走するA400Mの翼から機体に飛び移ったり、空中1500メートルで扉にぶら下がったり。ほかに、定番(?)のバイク追跡劇や、水中で3分潜りっぱなしのシーン(潜水のトレーニングを受け、ぶっつけ本番で撮影した)など、50歳を過ぎたというのに元気だなあ。
ウィーン、カサブランカ、ロンドンと、世界各地を巡りながらのアクションも定石どおり。なかでウィーン国立オペラ座で、プッチーニの「トゥーランドット」が上演されている舞台裏でトム・クルーズと2人の暗殺者三つ巴のアクションを繰り広げるシーンがヒッチコックばりで楽しめた。オペラ座内部の撮影はセットを組んだんだろうけど、屋上からロープで飛び降りるシーンは実際にオペラ座で撮影されている。
ヒロインに抜擢されたレベッカ・ファーガソンも、アクションの切れがいい。いかにもスウェーデン出身らしい美人だし、魅力的。名前を憶えておくことにしよう。
監督は『ゴースト・プロトコル』に続いてクリストファー・マッカリー。いい雰囲気だった『アウトロー』でもトムと組んでいるし、トム・クルーズを魅力的に見せる術を知っている。
冒頭、お馴染みのミッションを伝えられるシーンでにやりとした。中古レコード店。トムと女店員が合言葉を確認する会話。「なにかレアなものはないかな」「コルトレーン」「モンク」「ドラムはシャドウ・ウィルソン」。で、トムが買ってプレイヤーにかけると、音楽ではなく例のミッションが伝えらえるという趣向。
ジャケットは映らないが、この3人が一緒に演奏しているアルバムは2枚ある。「セロニアス・モンク・ウィズ・ジョン・コルトレーン」(ジャズランド)と「セロニアス・モンク・カルテット・ウィズ・ジョン・コルトレーン・アト・カーネギーホール」(ブルーノート)。どちらも1957年、新鋭コルトレーンが短期間モンクのグループにいたときの貴重な録音だ。コルトレーンがモンクと共演することで大きく飛躍したと言われる伝説のカルテット。ブルーノート盤は長らく眠っていた音源を2007年に発売したものだから、「レアもの」と言うここはジャズランド盤だ。
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