幻のアーチ橋
the arch bridge sunk in Lake Nukabira
水位の下がった糠平湖の湖面から姿を現した旧国鉄士幌線のタウシュベツ川橋梁。
士幌線は1939年に帯広-十勝三股間が開通した。大雪山の森林から伐り出したクロマツ、エゾマツなどを輸送するための山岳鉄道。建設費を抑えるため現地調達できる砂利や砂を使ったコンクリートのアーチ橋が60ほどもつくられた。
タウシュベツ川橋梁もそのひとつで、長さ130メートル。1950年代に糠平ダムが建設されることになって士幌線はルートが変わり、タウシュベツ川橋梁は糠平湖の底に沈んだ。夏から秋にかけて、ダムが満水になると橋は水面下に隠れるが、水位が下がる1月になると姿を現す。
国道273号線からスノーシューを履いて森のなかへ入る。スノーシューはかんじきに似ていて、ストックを使いながら歩く。スノーシューがないと太ももまで雪に埋もれてしまう。300メートルほど歩くと、橋を展望できる場所に出る。
橋は腐食が進み、いつ崩れるかわからない状態だという。冬は凍った湖面を歩いて橋までいくツアーもあるが、今年は氷の溶けるのが早く、3月1日に湖面に入るのが禁止された。
旧士幌線の線路跡。1978年に十勝三股-糠平間が、1987年に糠平-帯広間が廃止された。アーチ橋も解体されるはずだったが、住民の保存運動が実って北海道遺産に登録された。今ではアーチ橋を訪れる観光客も増えている。
士幌線終点の十勝三股駅跡。鉄道の修理工場だった建物が残る。
林業全盛期には1500人の住民がいたが、いま残るのは2軒だけ。うち1軒は喫茶店を経営していて、昔ふうの小屋が懐かしく繁盛しているとか。
かつての町の跡形もない。徐々に自然に還りつつある。沼までの踏み跡はシカが水を飲みにきたもの。背後は東大雪山系の石狩岳につづく山々。
第五音更(おとふけ)川橋梁。長さ109メートル。十勝三股駅と幌加駅の間にある。
幌加-糠平間の三の沢橋梁。長さ40メートル。雪がなくなれば橋上を歩くこともできる。
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