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January 08, 2015

『ゴーン・ガール』 完璧なブロンド美女

Gone_girl
Gone Girl(viewing film)

『ゴーン・ガール(Gone Girl)』は、デヴィッド・フィンチャーの映画らしくプロットが二転三転して行き着く先が読めない。しかも二転三転するごとに映画のテイストが変わって、いわゆるジャンル映画を横断するようになっているのが面白い。出だしは正統派のミステリー、それが社会派ふうに展開していたと思うと、途中から女性のロードムービーに変わり、一転して密室の監禁サスペンス、最後はひねりのきいた恐怖映画みたいになって終わる。

ミズーリ州の田舎町で暮らすニック(ベン・アフレック)の妻・エイミー(ロザムンド・パイク)が失踪する。エイミーはベストセラー『アメージング・エイミー(完璧な少女エイミー)』を書いた父の娘で、本のモデルだった。両親を中心にワイドショーも利用した公開捜査が過熱し、アリバイがあやふやで愛人の存在が発覚したニックに疑いがかけられる。ニックは殺人容疑で逮捕されるが、画面は一転、失踪したエイミーが車で移動し身を隠していることを映し出す。

前半はニックの視点で物語が進むけれど、やがてエイミーこそ真の主役であることがわかってくる。エイミーはニューヨークのセレブである両親の「作品」で、彼女自身もそれを演じていた。金も教養もある美女が実は……というのが後半の面白さ。

原作の小説は、アメリカで実際にあった事件に基づいている。「完璧な夫婦」の妻が失踪して殺され、夫が殺人罪で逮捕・起訴され有罪になった「スコット・ピーターソン事件」。原作を読んでないけど、映画と同じだとすれば、実際の事件を途中から上下左右引っくりかえしてみせたんじゃないかな。映画はそうなってる。

そこが見どころで、ヒッチコック好みのブロンド、ロザムンド・パイクが美しくも恐ろしい。と書けばネタバレだからついでに言えば、『氷の微笑』のシャロン・ストーンより魅力的だ。最大の見せどころは、ベッドの上のロザムンドにどばっと大量の血が飛びちるシーン。そこから映画は一挙にサイコ・ホラーというか、コメディ・ホラーというか、仮面をかぶった夫婦の化かしあいになる。

ちょっとだけ不満を言えば、エイミーが裕福な高校時代のボーイフレンドに助けを求め、豪邸に体よく監禁されるプロットがもっと突っ込んで描かれれば、血がどばっのショットがもっとショッキングだったろう。昔のイギリス映画『コレクター』のように、とまでは言わないが。

フィンチャーの映画にはいつもリアリズムというよりゲーム感覚がついて回るけど、この映画も同じ。それが好きかどうかは好みが分かれるところだ(実は僕はあまり好きではない)。でも面白さは抜群。

この映画、最初はカミさんと見に行く予定だったけど、一緒に行かなくて、ああ、よかった。


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