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September 05, 2014

『プロミスト・ランド』 アクチュアルな映画

Promised_land
Promised Land(viewing film)

『プロミスト・ランド(原題:Promised Land=約束の地)』というのはもともとユダヤ教に由来する言葉で、神に選ばれた遊牧民アブラハムが子孫に与えると約束されたカナンの地(パレスチナ)を指す。といって、この映画はユダヤ教やキリスト教が出てくるわけじゃあない。この映画のタイトルはたぶん宗教というより歴史、英国国教会の迫害を受けた清教徒たちが新大陸にやってきて築き上げた自分たちの土地を指して「約束の地」と言っているんだろう。言ってみればアメリカの原風景。

低い丘陵がうねる田園地帯に広大な農場と、林のなかに点在する小さな町がある。開拓以来つづくそんなアメリカの原型のような町が、グローバル化によって農産物価格が下落したせいだろう、不況にあえいでいる。そこへ天然ガス会社のエリート社員スティーブ(マット・デイモン)がやってくる。このあたりにシェール・ガスが埋蔵されていることがわかり、同僚のスー(フランシス・マクドーマンド)とその採掘権を農場主からいち早く買い集め、一帯の採掘権を押さえてしまおうとする。町は住民投票で賛否を決めることになったが、シェールガス採掘に反対する環境NGOのダスティン(ジョン・クラシンスキー)も町へやってきて反対運動をはじめる。

舞台はマッキンリーという架空の町。実際のロケはペンシルバニアで行われたが、これには背景がある。現実にペンシルバニアのダイモックという地域でシェールガス採掘が行われ、飲料水や水源が汚染される事故が起こったのだ。この映画を見るアメリカの観客は、当然そのことを思い浮かべる。映画がそんな微妙な問題に触れている証拠に、ペンシルバニアの住民(おそらく開発賛成派)が、大金をほのめかされ契約書にサインしてしまうこの映画の農民の描き方に怒ってfacebookでグループをつくっているという(wikipedia)。

だからこの映画、日本ではヒューマンな社会派ドラマという認識だろうけど、現在進行形のホットな問題を扱ったなかなかに政治的な映画でもある。映画の最後、ある事実が露見してスティーブは住民に謝罪し、会社をクビになって反対派の教師アリス(ローズマリー・デヴィット)のもとを訪れ、2人で緑豊かな「約束の地」を眺める。

マット・デイモンはこの映画に主演しているだけでなく、プロデューサーであり脚本家でもある。最初は監督も自分でやるつもりだったが、予定が詰まっていてできず、ガス・ヴァン・サント監督に依頼したという。マットはハリウッドのリベラル派として有名だけど、この映画でもラストを見れば彼がどちらに肩入れしているかは明らかだ。ハリウッドのスターがこんなふうに生々しい社会問題をテーマにして映画をつくり、自らの立場もはっきりさせる。地味な映画だからまだ製作費の半分ほどしか回収できていないようだけど(wikipedia)、ハリウッド映画もやるなあ。

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Comments

TBありがとうございました。
こちらの記事にTBお返しできませんのでurlをはっておきます。
http://77432090.at.webry.info/201408/article_8.html

Posted by: まっつぁんこ | September 09, 2014 at 05:20 PM

ありがとうございます。プロバイダーの相性でTBが張れたり張れなかったり、おかしいですね。マット=ガス組らしい、いい映画でした。

Posted by: 雄 | September 10, 2014 at 10:25 AM

本作についてわざわざTBをいただき、誠にありがとうございました。
貴ブログを開いたところ、残念ながら、他の貴エントリには付いている「TrackBack URL for this entry」の記載が本エントリだけには見当たりません。そこで、コメント欄を使わせていただきました。悪しからず。

Posted by: クマネズミ | September 10, 2014 at 09:06 PM

ありがとうございます。私のブログはniftyですが、最近、TBがうまくいかないことが多くて。

Posted by: 雄 | September 11, 2014 at 11:13 AM

こんにちは。
そうか、製作費の回収、半分もできていないのか…。
ビッグネームのスターが出て、
監督が一流でも
やはり社会派映画はよほどの視点がないと厳しい。
これはどこの国でも同じなんですね。

同じく、TB返しできませんでした。
TBありがとうございました。

Posted by: えい | September 14, 2014 at 06:10 PM

マットも限られた館でしか上映されないのは初めからわかっていたでしょうけど、それでもつくるところに彼の意気込みを感じますね。製作費1500万ドルだそうですから、少人数のスタッフで、セットもほとんど組まずにつくったんじゃないでしょうか。

Posted by: 雄 | September 15, 2014 at 11:38 AM

こんにちは。
本当に、いい作品でしたね。
「ハリウッド映画もやるなあ」確かにその通り!
TBさせていただきたかったのですが、表示されていませんでしたので、コメントさせていただきます。ご容赦ください。

Posted by: ここなつ | September 17, 2014 at 01:12 PM

ありがとうございます。フランネルのチェック柄を買うところとか、ディテールが細かいのがいいですね。

Posted by: 雄 | September 18, 2014 at 10:26 AM

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