『灼熱の魂』と『三姉妹 雲南の子』
熱帯夜に、重たい映画のDVDを2夜続けて見てしまった。
1本は『灼熱の魂』。今年、『複製された男』『プリズナーズ』とドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の秀作2本を見て、過去の作品を見たくなったから。ブロガー仲間のroseさんも絶賛されていたし……。
双子の兄妹の母が亡くなり、存在しないと聞かされた父と兄に向けた手紙を遺言として受け取って、母の故郷であるレバノンへ彼女の足跡をたどる旅に出る。今も癒えないレバノン内戦の傷にギリシャ悲劇のオイディプスを重ねた、現代史の旅。憎しみの連鎖をどのように愛へと昇華できるのか。すごい映画でした。
もう1本は『三姉妹 雲南の子』。こちらもワン・ビン監督の新作『収容病棟』を見て、見逃していたこの映画も見たくなった。
中国・雲南省、高度3000メートルの寒村に住む三姉妹を追ったドキュメンタリー。母は家を出、父は出稼ぎで不在、10歳の長女が妹2人と暮らしている。伯母の家で家事を手伝い、食事をわけてもらう。食事はじゃがいもと麺類。3歳の妹はまだ子供らしい感情を見せて泣き、笑うけれど、10歳の長女は一度も笑顔を見せず、上映時間150分の間、氷のような表情を崩さない。
子供が、どのような環境におかれることで仮面のような顔で日常を送るのか。胸を衝かれる。子供たちは牛や羊の糞を広い、それを肥料にじゃがいもを植える。樹木も生えない高地を吹き抜ける風のびゅうびゅう鳴る音が耳に残る。
Comments
ここのところ忙しくてブログが放置状態でして、久々にPCに向かっています。
しゃくたま、ご覧になりましたたか。私はこの監督作品の中ではこれが一番好きです。
ロジックがいちばんしっかりしてるように思うんですよね。
『プリズナーズ』はいやにハリウッドを意識してる感じがしたし、『複製・・』は逆に飛ばし過ぎた感があり。
デビュー作?出世作?となるこれは、トリックの裏にある真実が一番悲惨だからこそ、人のこころをつかんだような気がします。
ワン・ビン監督作は実は未見なんですね。尺が長いので予定と合わないっていうのがありまして。たぶん特集上映かなんかでまた出てくると思いますので、アタックしてみます。
Posted by: rose_chocolat | August 28, 2014 03:49 PM
『プリズナーズ』や『複製された男』の監督が、こういう現代史ものをつくっていたのが驚きでした。もっとも、テーマは一貫していますね。
僕もワン・ビンは9時間の『鉄西区』が未見です。次の機会にはと思っているのですが。
Posted by: 雄 | August 29, 2014 11:55 AM