『アメリカン・ハッスル』 えっ、あのジェニファーが
『アメリカン・ハッスル(原題:American Hustle)』の面白さはどこから来るんだろう?
『スティング』みたいな「コン・ゲーム」だから? FBIが詐欺師を使っておとり捜査するお話だから、その要素はある。詐欺師のアーヴィン(クリスチャン・ベイル)と相棒で愛人のシドニー(エイミー・アダムス)がFBI捜査官・リッチー(ブラッドリー・クーパー)に逮捕され、罪をまぬがれるためおとり捜査に協力することになる。2人はアラブの富豪が投資するでっちあげ話で地方政治家のカーマイン(ジェレミー・レナー)とマフィア(カメオ出演のロバート・デ・ニーロら)に詐欺(ハッスル)を仕掛けようとする。その結末やいかに?
「コン・ゲーム」というより、男と女のお話だからか? たしかにそうだ。アーヴィンは結婚して妻がいる。金髪美女の妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)は情緒不安定で、マフィアの男に近づき、おとり捜査をぶちこわしそうになる。アーヴィンはそんなロザリンに惚れてるのに、シドニーにも愛人という以上に真剣な感情を持っているらしい。捜査官のリッチーも、捜査の過程でシドニーといい雰囲気になってくる。この二組のもつれた関係がどういう結末を迎えるのか?
『アメリカン・ハッスル』は同時に男と男の話でもあって、友情の味もある。FBI捜査官と詐欺師という本来は敵同士がチームを組むことになる。敵であり味方でもある男たちの間に、女性のシドニーが入ってくることで、この男2人の関係はいよいよ複雑になってくる。一方、アーヴィンは騙す相手のカーマインにも友情に近いものを感じている。男も女も感情の糸がこんがらかって、どこに出口があるのか映画の最後まで分からない。
そんなふうに、詐欺の騙しと男と女の複雑に絡みあった感情と、2種類の糸がもつれあうところから滲み出る面白さとおかしさが、この映画の魅力。どちらかというとコン・ゲームというより、出てくる誰も彼もが自分に弱みを抱えた人間たちのこんがらかったラブ・ストーリー。
それに加えて役者の魅力、しかも従来の役を裏切るような新しい魅力が楽しい。映画の冒頭、頭の淋しいアーヴィンのクリスチャン・ベイルがつけ毛で増毛させながら一九分けしてスーツを着るファースト・シーン。一見して鬘ではないし、髪を剃ったのか? 『マニシスト』で30kg減量してみせたクリスチャン・ベイルは、今回は3段腹を見せる。バットマンから一転してぶざまな70年代ふう中年男。
ブラッドリー・クーパーは『ハングオーバー!』や『世界にひとつのプレイブック』とも似たエキセントリックなところのある役どころ。FBI捜査官といいながらパンチパーマにしたり、下層出身らしい家庭がちらっと描かれるのがいい。
エイミー・アダムスはどちらかというと知的な痩せ型だけど、胸を大きくえぐったドレスが悩ましい。いちばん驚いたのはジェニファー・ローレンス。『世界にひとつのプレイブック』のときも『あの日、欲望の大地で』や『ウィンターズ・ボーン』の少女がこうなったの? とびっくりしたけど、今回はさらに驚くエロティックな金髪美女。ピンナップ・ガールふうな外見に、蓮っ葉な言葉と雰囲気。『007 死ぬのは奴らだ』を歌いながら掃除するシーンにはやられました。
これだけの役者を使い、しかもみんな従来のイメージを裏切る魅力を引き出したデヴィッド・O・ラッセル監督は、やはり只者じゃない。昔見て面白かった『スリー・キングス』も彼の監督だったんですね。コメディに関して、やはりハリウッド映画はすごい。ついでに、衣装も髪型も70年代ふうで、今となってはダサく感じられるのが、その時代に青春を送った一人としてなんとも懐かしかった。デューク・エリントンや70年代ポップスが流れる音楽も。
Comments
男も女も、好きな役者さんばかり。ぜひ、見たいです。エイミー・アダムスは、それほどでもないかな?
Posted by: aya | February 19, 2014 05:29 PM
役者を見ているだけでも楽しいです。特にデ・ニーロが出てきたときは、お、おっという感じ。ジェニファーは意志の強い少女役が印象に強かったので、これもびっくりでした。
Posted by: 雄 | February 20, 2014 09:58 PM
「恋におちて」のデ・ニーロは、初々しくてよかったなぁー
Posted by: aya | February 21, 2014 04:59 PM
ニューヨーク郊外からマンハッタンに向かう電車のなかで出会うやつですね。デ・ニーロもメリル・ストリープも若かった。
Posted by: 雄 | February 23, 2014 06:02 PM