映画 私的ベスト10・2013
今年もベスト10を選ぶほどたくさんの映画を見てるわけじゃないけど備忘録として、そして楽しみとして、今年見た映画から私的ベスト10を選んでみました。洋画邦画ごちゃまぜです。
1 悪の法則
2 嘆きのピエタ
3 ペーパーボーイ 真夏の引力
4 愛・アムール
5 東ベルリンから来た女
6 そして父になる
7 セデック・バレ
8 恋の渦
9 もらとりあむタマ子
10 燃えよ! じじいドラゴン 龍虎激闘
1 ハリウッドの映画作法を無視した作家コーマック・マッカーシーの脚本は、まるでシェークスピア劇のよう。それをリドリー・スコットは砂漠の乾いた風景の中で金とセックスと暴力まみの生と死をめぐる問答に仕立てあげた。キャメロン・ディアスの「私、腹ペコ」という台詞ですとんと終わるまで、目を離せない。リドリー久々の快作。
2 キム・ギドクの映画はいつも身を刺す身体感覚と過剰すぎる思いとに支配されている。闇金融の男の前に母と名乗って現れた女は本当の母なのか。ソウルの取り残されたような路地で展開される愛と復讐の劇。いっとき映画を撮れなかったスランプを乗り越えてギドク節全開。
3 熱と湿気でむんむんするフロリダの田舎町と森を舞台にしたプアホワイトたちの犯罪。それに青春物語のほろ苦さが加わって、今年いちばんの驚きだった。アフリカ系のリー・ダニエルズ監督は南部の黒人差別にも目配りする。ニコール・キッドマンのビッチぶりが魅力的。
4 パリのアパルトマンで暮らす老夫婦の尊厳死をめぐるストーリー。不意打ちのように挟みこまれるミステリアスな映像が緊張感をいよいよ高める。ミヒャエル・ハネケ監督はヒューマニズムとは無縁の場所から老夫婦の行く末を見つめている。「アムール」という題は多義的だ。
5 主人公は社会主義国家時代に東ベルリンから海岸町に左遷され監視されている女性医師。病院での小さな出来事と日常生活から滲みでてくる不安と緊張が、細やかに丹念に描写される。風景の微妙な光の具合、かすかな音に対する感受性、抑制のきいた画面が素晴らしい。
6 是枝裕和監督らしいヒューマンな眼差しにみちた映画。鼻持ちならないエリート福山雅治が見せる変貌、社会の階層ピラミッドから降りたリリー・フランキー、心情が揺れに揺れる尾野真千子、肝っ玉かあさんの真木ようこ、そして2人の子供たち。役者がみんないい。正統派の映画づくりも素敵だ。
7 日本統治下の台湾で先住民セデック族が蜂起した「霧社事件」をテーマにした2部作。膝を屈して生きてきた彼らがなぜ立ち上がったかを、植民者を声高に非難するわけでなく説得的に描き出す。日本化した先住民や、彼らに心を寄せる日本人といった複眼的な視点、そして彼らの神話で一本筋を通し、台湾映画の成熟を感じさせる。
8 好きな映画じゃないんだけど、面白い。エグいコメディ。豹柄の服を着たフリーターや風俗嬢やアルバイト店員といった20代の男女9人が欲望まるだしにくっついたり離れたりの恋のバトル。これって自分のことだよなと共感させつつ辛らつでもある、そのバランスが絶妙。大根仁監督がわずか4日間で撮りあげた。
9 事件も出来事も起こらない映画。大学を出たけれど就職に失敗した前田敦子が父親のスポーツ用品店に戻って、朝寝して食って昼寝してマンガ読んでまた食ってでれでれ日を送る。最大の変化は、朝、父親が開けていた店を最後に前田敦子が開けるようになるくらいか。そんな時間からユーモアといとおしさが流れ出る。
10 足元もおぼつかない70年代クンフー映画の老スターが、戦いとなると一転鮮やかな突き蹴りにオオッとなる。かつてのクンフー映画へのオマージュであると同時に、それを現在へとつなげようとする姿勢。全盛期の香港映画を思い出させる臆面もないギャグとセンチメンタリズムとヒロイズムも楽しい。
ほかにリストアップしたのは『ゼロ・グラビティ』『イノセント・ガーデン』『ビル・カニンガム&ニューヨーク』『ホーリー・モーターズ』『ジャンゴ 繫がれざる者』『サイド・エフェクト』『奪命金』『楽園からの旅人』といったところ。
皆さん、よいお年を。
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