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September 04, 2013

奥野ビル2つの展覧会

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2 exhibitions in Ginza

銀座の奥野ビルといえば1932年に建てられ、築80年以上になる現役の歴史的建造物として有名だ。同潤会アパートをつくった設計者の手になり、建設当時は高級アパートメントだったという。いかにも昭和のモダニズムを感じさせる建物。今は部屋のほとんどがギャラリーや洒落たショップになっている。ここで写真に関係する2人の展覧会が開かれている。展示は2人とも写真でないのが面白い。

大西みつぐ「物語」(~9月8日、奥野ビル306号室)。

306号室では昭和初期の完成直後から平成の始めまで女性が美容室を営んでいた。1980年代に廃業した後も、彼女はこの部屋に暮らしていたという。今はほとんどの部屋がギャラリーなどに転用するため改装されているけれど、この部屋だけは女性が住んでいた当時のままに残され、それを生かしながらいろんな展示が行われている。

壁には直径40センチほどの円い鏡が3つかかっている。美容室を営業していたとき、この鏡の前に女性たちが座ったのだろう。背後の壁は部分的にはがれて、数種類の壁紙が見える。戦前、戦後を生きてきた女性の「時間」を感じることができる。そんな空間のなかで、戦前のものらしい真空管ラジオから懐かしい音楽が流れている。古い女性のポートレートが2枚置かれている。化粧用の小物もある。大西みつぐはそうした「もの」をさりげなく配置することで、306号室とここに住んだ女性の「物語」を、訪れた者がさまざまに想像し、読むことを仕組んでいる。

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飯沢耕太郎「DUNIA─世界」(~9月7日。地下の「巷房2」)。

写真評論家の飯沢耕太郎はこのところ、「きのこ」愛とか小説とか、写真の外の世界での活躍が目覚しい。この展示はドローング。色んな色の線がぐるぐると渦巻いて、魚とか、きのこらしきもの、人の顔、そのなかでも眼、あるいは妖怪らしきもの、時には形も定かでないものが立ち上がってくる。そんな生成の過程が感じられる。

会場に置かれた古いノートを見ると、写真についての言葉の上に、まるでいたずらがきのようにドローイングが描かれていた。写真について語るのは言葉を使ってアートの核を捉えようとする矛盾した仕事だけど、知的作業をしながら無意識に手が動いてその作業に回収できないなにものかが生まれた。それがやがて自覚的になされてこの展示となって結実した。そんな想像をしてしまう。


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