鷲尾倫夫「巡歴の道」展ほか
Washio Michio photo exhibition
鷲尾倫夫はかつて写真週刊誌の腕利きカメラマンであり、その後、いくつものテーマで作品を撮り、写真集をつくってきた。いま銀座ニコンサロンでやっている「巡歴の道」(~8月27日)のテーマは沖縄。会場にいた鷲尾さんに話を聞いた。
鷲尾さんは今まで沖縄を撮ったことはなかったそうだ。2年前から沖縄本島の北から南まで、そして島々を歩きはじめた。行く先々でおばあに声をかけ、話しこむ。自宅においでと言われ、お腹がすいてるだろうと芋をごちそうになる。やがてぽつりぽつりと戦争の話が出てくる。おばあは本土の人間にも分かる言葉でしゃべってくれるが、話に熱が入ってくると思わず沖縄言葉になる。おばあは全部をしゃべってくれるわけでない、他人には話さないこともある、と鷲尾さんは言う。
作品はモノクローム。森のなかの神聖な空間、御嶽(うたき)の風景が数点、作品の核のように置かれている。その前後には沖縄のおばあとおじいたち。若者たち。町の何気ない光景。数少ないが、米軍の存在を思い出させる写真もある。なかでも何人ものおばあたちの表情には、いつまでも見入ってしまう。
銀座から新宿へ回って原芳市「天使見た街」展(Place M、~8月25日)。先日、「常世の虫」という充実した写真展を開いた原が、ここではリオのカーニバルを撮っている。といってもカーニバルそのものでなく(カーニバルは昔、篠山紀信が「オレレ・オララ」という凄い写真集をつくった)、カーニバルに参加するコスチュームに身をつつんだ男女を町中で捉えたポートレートと、町角のスナップ。原のカメラは、町なかからファベーラと呼ばれるスラムにまで入ってゆく。
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