東松照明さんとEOS kiss
a meeting for remembrance of Tomatsu Shomei
去年の年末に亡くなった写真家の東松照明さんを偲ぶ会が開かれ、たくさんの人が東松さんに献花し、思い出を語るために集まった(3月26日、六本木・国際文化会館)。会場の外は満開の桜。そういえば東松さんが撮った桜は、ただ美しい花と日本の風景でなく、農家の庭先で見事な桜の傍らに廃車のトラックがあったり、薬の看板がかかっていたりしたっけ。普通ならフレームから排除してしまうものを、東松さんはきちんと見詰めていた。
遺影の前で、東松さんたちが結成したVIVOの仲間と関係者が次々に思い出を語る。左から丹野章さん、奈良原一高さん夫人、川田喜久治さん、東松さん未亡人、細江英公さん、福島辰夫さん、森山大道さん、荒木経惟さん。
東松さんの思い出は1月8日のブログで書いたけど、印象深いことをもうひとつ。
1990年代の半ば、僕がカメラ雑誌の編集をしていたころ、東松さんが編集部にいらしたことがある。そのとき東松さんが肩から下げていたカメラはキヤノンEOS kissだった。当時はデジタル・カメラがようやく実用になりはじめた時期で、プロでも使う人はそんなに多くなかった。しかもEOS kiss といえば、小さな子供を持つ若いお母さんをターゲットにした、一眼レフのなかでもいちばん安い普及機。
「東松さん、EOS kissで撮るんですか」「そうだよ。これがよく写るんだよ」。東松さんはそう言って、いたずらっぽく笑った。大病の後で、重い一眼レフを持ち歩くのはつらいという事情もあったかもしれない。でも、EOS kissを持ってカメラ雑誌の編集部に現れた東松さんは素敵だった。
そのこともあって、実は僕も一眼レフはEOS kissを愛用している。もちろんそれで東松さんのような写真が撮れるわけじゃないけど。
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