篠山紀信展「写真力」

Sinoyama Kishin photo exhibition ”The People”
篠山紀信展「写真力」に行ってきた(~12月24日、初台・東京オペラシティ アートギャラリー)。
1960年代から現在まで、篠山が半世紀以上にわたって撮ってきた歌手、映画や歌舞伎の役者、アスリート、アーティスト、人々のポートレート129点が大きな会場いっぱいに、見上げるような特大サイズで展示されている。ポーズする三島由紀夫(1969)、水着の山口百恵(1977)、ジョン・レノンとヨーコ(1980)、あでやかな坂東玉三郎(1988)、宮沢りえのヌード(1991)、蒼井優(2011)など、それぞれの時代を象徴するイメージとして記憶に鮮明だ。
既によく知られた写真が多いけれど、それが特大サイズで展示されていることに新しい発見がある。毛髪の一本一本や皮膚の細かな皺まで細密に記録されたディテールを見ていくと、篠山紀信というのは巨大な眼球のことであるのが改めてよく分かる。対象の微妙な一瞬を切り取る眼球の観察力、細密な描写力は比類ない。
そして眼球の背後にあるのは「空」であるように思える。眼球の背後にあるべき作者の精神、創造する者の作家性に当たる部分には何もない。その代わりそこを埋めているのは時代の無意識とでも呼べばいいだろうか。作家性を無にして、そこに時代が求める無意識の欲望を呼び込む。それが篠山紀信が採用した戦略であるように思える。そのようにして篠山は時代が求めるメディア、巨大な眼球になった。
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