嶋津健一ハードバップ・トリオ
ピアニスト嶋津健一はリーダーとして複数のグループを持ってるけど、林正男(b)、今村健太郎(ds)と組むこのトリオは1950年代の、ジャズがいちばん面白かった時代のいわゆるハードバップを中心に演奏している。ノリのいい、しかも美しいプレイを堪能した(3月29日、赤坂・リラキシン)。
この夜演奏した曲の作曲者を並べるとウィントン・ケリー、ウェス・モンゴメリー、デイブ・ブルーベック、ベニー・ゴルソン、ハンク・モブレー、ボビー・ティモンズ、ジジ・グライスと、ファンキーでブラックなハードバップ全盛期の錚々たる面々ばかり。演奏したのは彼らの有名曲ではなく、嶋津の美意識に触れる、結果としてあまり知られていないものが多い。そこに嶋津のオリジナル曲がちりばめられる。
1980年代後半から90年代前半にニューヨークにいた嶋津は、多分ハードバップを演奏する機会が多かったんだろう。その反動からか、日本に帰国してからはハードバップをめったにやらなくなり、自分の音楽世界を深めていった。その成果は加藤真一(b)、岡田佳大(ds)のトリオで出した4枚のアルバムに記録されている。美しいバラードあり、「いそしぎ」や「シェルブールの雨傘」など名曲あり、オリジナルありで、どれも僕の愛聴盤になっている。
そのトリオが解散したのは、やりたいことをひとまずやり終えたということだろうか。嶋津が再びハードバップに取り組みはじめたのは、そんなふうに舞台が一回りし、肩の力も抜けて原点に戻ったからなのかも。このトリオがどんなふうに進化するのか。楽しみだ。
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