『キリング・フィールズ 失踪地帯』 湿地の死体
Texas Killing Fields(film review)
冒頭、この映画はおおよそ事実に基づいているというクレジットが出る。
『キリング・フィールズ(原題:Texas Killing Fields)』は、テキサス州東部で起こった未解決の連続殺人事件を題材にしている。ヒューストンからメキシコ湾にいたる80kmの幹線道路沿いで1970年代から40人近い少女やティーンエイジャーが行方不明になり、周辺の油田地帯や湿地帯で死体が発見された。事件の発生は38年間に及び、1件も解決されていない(Cold Case USA)。アメリカでは有名な事件らしい。
場所はテキサス東部で、ニューオリンズのあるルイジアナ州境に近いから、テキサスといっても砂漠でなく湿地帯。立ち枯れた樹木の黒々とした影が連なる湿地帯の風景が、この映画の基調となるイメージ。そんな枯木立に囲まれた水辺の底に死体が捨てられている。たしかに「キリング・フィールズ」と呼びたくなる気配。実際にルイジアナの、ハリケーン・カトリーナでやられ荒涼とした地域でロケされている。
地元出身のマイク(サム・ワーシントン)とニューヨークから転属してきたブライアン(ジェフリー・ディーン・モーガン)の2人の刑事が、若い女性が連続して殺された事件を追う。何人かの怪しい男が浮かんでくるが、そんなとき、ブライアンが世話をやいてきた少女・アン(クロエ・グレース・モレッツ)が行方不明になる……。
アンをめぐるいくつかのショットが記憶に残った。夕暮れの路上、ガソリンスタンドの淋しい灯りのなかに立っているアンをぐるりと回る移動ショット。田舎町を走るフリーウェイの橋桁の下、人気のない沼地を歩くアン。雨に濡れ街の歩道を歩くアン。『キック・アス』や『ヒューゴの不思議な発明』に出ていた少女クロエ・グレース・モレッツの、前作では見せなかった大人のような意思的な表情が素敵だ。
もっとも、映画全体はやや平板。クライム・サスペンスとしての緊迫感に欠けるし、2人の刑事やアンの描き方も深みがない。監督のアミ・カナーン・マンはマイケル・マンの娘。父親のスタイリッシュなアクションもののようにとは言わないが、もっとアクセントがほしいなあ。
Comments
>やや平板
まさしく。。。
せっかく役者が揃っているのにもったいなかったですね。 だから未公開かと納得もしてしまいました。
Posted by: rose_chocolat | April 22, 2012 07:40 AM
この映画、最初はダニー・ボイル監督の予定だったらしいですね。それが「暗すぎる」との理由でダニーが降り、製作のマイケル・マンが娘に振ったということでしょうか。奇をてらうところのない演出に好感は持つのですが、それにしても、でしたね。
Posted by: 雄 | April 22, 2012 06:06 PM