« わが家の放射線量 | Main | 『ヒューゴの不思議な発明』 驚異の追体験 »

March 17, 2012

吉本隆明逝く

1203171w
in memory of Yoshimoto Takaaki

吉本隆明が亡くなった。1960年代から70年代にかけて、むさぼるように読んだ記憶がある。細かいことはすべて忘れてしまったけれど、徹底して自分で考えること、正義を背負わないこと、を学んだ。果たして自分がそれをどれだけ実現できたかは覚束ないにしても。

「佃渡しで」という好きな詩の一節を書き写す。

佃渡しで娘がいった
<あの鳥はなに?>
<かもめだよ>
<ちがうあの黒い方の鳥よ>
あれは鳶だろう
むかしもいた
流れてくる鼠の死骸や魚の綿腹(わた)を
ついばむためにかもめの仲間で舞っていた
<これから先は娘にきこえぬ胸のなかでいう>
水に囲まれた生活というのは
いつでもちょっとした砦のような感じで
夢のなかで掘割はいつもあらわれる
橋という橋は何のためにあったか?
少年が欄干に手をかけ身をのりだして
悲しみがあれば流すためにあった

<あれが住吉神社だ
佃祭りをやるところだ
あれが小学校 ちいさいだろう>
これからさきは娘に云えぬ
昔の街はちいさくみえる
掌のひらの感情と頭脳と生命の線のあいだの窪みにはいって
しまうように
すべての距離がちいさくみえる
すべての思想とおなじように
あの昔遠かった距離がちぢまってみえる
わたしが生きてきた道を
娘の手をとり いま氷雨にぬれながら
いっさんに通りすぎる

|

« わが家の放射線量 | Main | 『ヒューゴの不思議な発明』 驚異の追体験 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/41136/54242097

Listed below are links to weblogs that reference 吉本隆明逝く:

« わが家の放射線量 | Main | 『ヒューゴの不思議な発明』 驚異の追体験 »