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February 14, 2012

『ドラゴン・タトゥーの女』 正統派フィンチャー

Dragon_tattoo
The Girl with The Dragon Tattoo(film review)

『ドラゴン・タトゥーの女(原題:The Girl with The Dragon Tattoo)』の原作、「ミレニアム」3部作は第1巻『ドラゴン・タトゥーの女』だけ読んだ。スウェーデンのミステリーを読むのは、その昔の「マルティン・ベック」シリーズ以来。ミステリーのいろんな要素が山ほど詰め込まれていて、なるほど世界的ベストセラーになるのはこういう小説なんだな。

孤立した島で富豪一族の殺人という密室犯罪の謎解き。ナチスの過去がからむ歴史もの。猟奇連続殺人というシリアル・キラーもの。コンピューターを駆使したハイテク犯罪。見え隠れするキリスト教。パンクな女主人公の復讐劇。もうひとりの主人公であるジャーナリストがからむ社会派的な問題意識。主人公2人のラブ・ストーリー……。

そんなものがうまくシャッフルされて、軽快なテンポで語られてゆく。とても口当たりのいいミステリーなんだけど、それだけにすべてがさらっと処理され、すごいミステリーを読んだときの深い闇に引きずり込まれるような戦慄はない。贔屓にしているマイクル・コナリーなんかに比べると、そこが物足りない。

『ドラゴン・タトゥーの女』はスウェーデンでも映画化されたけど(未見)、ハリウッド版リメイクの監督はデヴィッド・フィンチャー。前作『ソーシャル・ネットワーク』は評価が高いが、やっぱり『エイリアン3』『セブン』『ファイト・クラブ』『ゾディアック』といったダークでミステリアスな作品のほうがフィンチャーの本領だろう。

不気味なモノたちがうごめく「エイリアン」ふうのオープニング・クレジットからしてフィンチャー・ワールド全開だ。どんよりした雲に覆われた冬のストックホルムや小島の風景も、フィンチャー好みの閉ざされた感覚。主人公のミカエル(ダニエル・クレイグ)とリスベット(ルーニー・マーラ)が出会うのだいぶ後になってからで、それまでミカエルが絡む本筋の殺人事件と、ドラゴン・タトゥーの女・リスベットをめぐるサブ・ストーリーがテンポよく交互に語られてゆく。

僕は小説を読んでいるから、そんな冒頭の「仕込み」はちょっと退屈したけど、複雑なストーリーを手際よく語る職人技を見ながら、フィンチャーは新しい作り手として知られるけど意外に正統派かもしれないな、と思っていた。異質なカットとカットを衝突させて観客を驚かせるつなぎや、絶えず流れる音楽(レッド・ツェッペリンなど)で情動を高めていくやり方は、ヒッチコックはじめ20世紀の映画が積み重ねてきたものだ。斬新な映像感覚や今ふうな音楽の選びで新しく見えるけど、語り口はオーソドックスと思う。

そんなスタイルで、いろんな要素のある原作からフィンチャーらしく猟奇殺人やリスベットの復讐劇をふくらませて、ダークな味のミステリーに仕立てている。原作ではナチスの亡霊が絡む歴史サスペンスの要素がもっと大きかったと記憶する。ドイツでナチスが台頭したとき、国内ばかりでなく近隣諸国でも親ナチス勢力対反ナチス勢力の対立があった。そのあたりが面白く、いかにもヨーロッパのミステリーだなあと感じた。映画は、そのあたりさらりと触れるにとどまっている。そこがフィンチャーらしいというか、ハリウッド映画というか。

それにしてもドラゴン・タトゥーの女を演ずるルーニー・マーラが、『ソーシャル・ネットワーク』に出てた女の子だとは気づかなかった。眉を剃り、鼻と眉にピアス、パンクな髪型、背中にタトゥーを背負って、ハードなシーンにも挑んでいる。見上げた役者根性だね。


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