「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展
Sakai Hoitsu and Edo Rinpa exhibition
千葉市美術館へ行く機会が増えた。それだけ気になる展覧会をやってるってことだろう。去年の田中一村展もよかった。今回は「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展。市の美術館が見ごたえのある展覧会を企画している。
酒井抱一(ほういつ)は、17世紀に俵屋宗達、18世紀に尾形光琳らが京都でつくりあげた「琳派」を幕末も間近な19世紀に江戸で受け継ぎ発展させた。その酒井抱一を中心に、もう一人のスター鈴木其一(きいつ)らの作品が幅広く集められている。
もともと琳派は絵画だけでなく工芸や着物など生活のなかに浸透して人気を集めた。今回も絵画だけでなく書、扇や団扇、着物、蒔絵、おもちゃみたいな豆画帳なんかが幅広く集められていて面白い。僕が日本の伝統絵画を意識して見るようになったのは日本画家の友人ができたこの20年くらいだけど、特に琳派に既視感を感ずるのは、ガキのころ身近にあった手箱や杯の蒔絵、着物の柄なんかに琳派の遥かな影があったからだと思う。
なかでも酒井抱一は優美で繊細で、琳派の美意識の極みみたいなところがある。パックス・トクガワのぎりぎり最後、文化・文政期に大人気になった美術工芸品は今でいうブランド品だったろう。実際、丸のなかに抱一の名をデザインして装飾として使っているのは、ルイ・ヴィトンがLVの頭文字をデザインとして使っているのとまったく同じ。
これが弟子の鈴木其一になると、よりデザイン的でありながら、そのなかにシュールな「奇想」がうごめきはじめる。「夏秋渓流図屏風」で木の幹にへばりついた苔など、眺めているとまるでエイリアンみたいな不気味を感ずる。これは抱一と其一の個性の差なんだろうけど、世代の差と考えてみれば、其一は黒船と幕末の動乱がいよいよ近づいた時代の空気を敏感に感じていると思うのは深読みにすぎるだろうか。
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