« 紅葉の万座(1) | Main | 紅葉の万座(2) 八ツ場ダム予定地 »

October 15, 2011

上野茂さんを悼む

1110151w
in memory of Ueno Shigeru
(倒れる前日に送られてきた上野さんの写メール「早朝の棚田」)

静岡県下田に住む友人、上野茂さんが7月に亡くなっていたことを数日前に知った。

上野さんと会うのは年に1度あるかないかだけど、月に1、2度、写メールと短いメッセージが送られてきた。それが春ごろから来なくなり、どうしたんだろうと気にかかっていた。10日ほど前、あるものを送ったら折り返し母堂から電話があり、2月に脳梗塞で倒れリハビリの甲斐なく7月に亡くなったとのこと。58歳。自分より若い友人の死はひときわ応える。

上野さんと初めて会ったのは十数年前、僕が写真雑誌の編集をやっているときだった。上野さんは大学の写真学科を出て故郷の下田に帰り、仕事のかたわら写真を撮っていた。作品を何度か見せてもらったことがある。伊豆半島の日常の暮らしを淡々と撮ったモノクローム。穏やかな上野さんの人柄そのままの写真だった。

それ以来、東京へ出てくるときに連絡があり、会って写真の話や共通の趣味である映画やジャズのことを話した。最後に会ったのは去年、彼が師と仰ぐ写真家・英伸三さんの写真展のオープニング・パーティ。このところ市の関係者に頼まれて、下田や周辺の祭りや行事を撮っているという。自宅に暗室をつくろうと思っているという話も聞いたから、いよいよ本格的に写真をやるんだな、と感じた。

冒頭の写真が今年2月2日、倒れる前日にもらった最後の写メール。「早朝の棚田」とあるから、たぶん西伊豆の松崎で撮られたものだろう。こんなメッセージが添えられていた。

「今日CDが届きました。ありがとうございます。ドロシーのジャケットはM.スコセッシのギャング映画に出てきそうで……(笑)。魅力的な写真と身近に聞こえる録音は時々目がウ井スキーに向います(笑)。明日、豆まきが終わったら飲みます」

ちょっと説明すると、ポーランド出身の映画監督、イェジー・スコリモフスキの話をしていて、僕が彼の出世作『早春』を見ていないと言ったことがある。上野さんはそれを覚えていて、ケーブルTVでやってたから録画しましたといってDVDを送ってくれた。そのお礼にと1950年代のアフリカ系ジャズ・ボーカリスト、ドロシー・ダンドリッジのCDを送った。そのジャケットが美しいドロシーのポートレートで、スコセッシのギャング映画みたいと、写真家の上野さんらしくそのジャケ写に反応しているのだ。

明日、豆まきが終わったら飲みますとは、母堂と暮らす家での予定だったのか、撮影だったのか。でも上野さんは写メールを送ってくれた翌朝、豆まきもできずウ井スキーに向かうこともなく倒れた。合掌。


|

« 紅葉の万座(1) | Main | 紅葉の万座(2) 八ツ場ダム予定地 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 上野茂さんを悼む:

« 紅葉の万座(1) | Main | 紅葉の万座(2) 八ツ場ダム予定地 »