森山大道『ON THE ROAD』展
Daido Moriyama Photo Exhibition
森山大道『ON THE ROAD』展(~9月19日、大阪・国立国際美術館)のオープニングに行ってきた。
この展覧会の見どころはふたつある。ひとつは、『にっぽん劇場写真帖』や『狩人』『写真よさようなら』といった初期の代表作がヴィンテージ・プリントで見られること。
森山の初期作品ではネガが失われたものもあるから、これはめったにないことだ。師の細江英公仕込みだからもともとプリントはうまいけれど、この段階ではあくまで印刷物のための原稿であり、80年代以降の見せることを目的としたプリントとは違う。最初の写真集『にっぽん劇場写真帖』は辰巳四郎の装丁で、デザインや印刷に辰巳がどこまで関与したか分からないけれど、プリントよりさらに荒れた粒子やハイ・コントラストなど、本としての力も大きい。その差が、編集者として興味深かった。
もうひとつの見どころは、最新作の「東京」。
カラーで、大きなプリントが壁面いっぱいに並べられた迫力。森山に珍しいカラーであるだけでなく、デジタル・カメラで撮られているようだ。これまでも彼はカラーを撮ってはいるけれど、モノクロの完成度に比べるとまだ試行錯誤の感じがあった。今回の「東京」で、「森山大道のカラー」が最初のピークを迎えた気がする。それは彼がデジタルを自分のものにし、しかもいかにもデジタルといった調子でなく、限りなくフィルムの質感に近く仕上げたことによるんじゃないか。デジタルが森山のカラーを自由にした、と言えるかもしれない。
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