浜岡原発を止める署名
a signature-obtaining campaign to stop the Hamaoka Nuclear Power Station
庭の梅の実。
数日前のことになるけれど、中部電力が緊急安全対策のため止まっている浜岡原発3号機を再稼動させることを明らかにした。福島の危機がなお進行中のいま地元自治体がすんなり了承するとも思えないけれど、東海地震震源域にある浜岡原発は拙ブログで紹介した石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)はじめ多くの人が、いちばん危険な原発だと警告している。
そういえば同じ日の新聞に、敗戦後の日本社会を描いた『敗北を抱きしめて』(名著です)の著者ジョン・ダワー(日本近代史)のインタビューが載っていて(4月29日、朝日新聞)、そこで彼はこう言っていた。
「個人の人生でもそうですが、国や社会の歴史においても、突然の事故や災害で、何が重要なことなのか気づく瞬間があります。すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことができるスペースが生まれるのです。関東大震災、敗戦といった歴史的瞬間は、こうしたスペースを広げました。そしていま、それが再び起きています。しかし、もたもたしているうちに、スペースはやがて閉じてしまうのです。既得権益を守るために、スペースをコントロールしようとする勢力もあるでしょう。結果がどうなるかは分かりませんが、歴史の節目だということをしっかり考えてほしいと思います」
関東大震災、敗戦以来の「歴史の節目」に、ダワーの言うスペースを「新しい・創造的な方法」で埋めるのか、「既得権益」が再びそのスペースを占めてしまうのか、せめぎあいは既に始まっている。
浜岡原発については、ずいぶん前から運転停止を求める地元の市民運動があったし、訴訟にもなっている。個人としていま意思表示する方法がないかと思ったら、「原発震災を防ぐ全国署名」をやっていた。現在90万人の署名が集まっているが、100万を目標に、もしくは浜岡原発が止まるまでやるという。さっそく署名用紙をダウンロードして、身の回りで署名を集めはじめた。
これは僕の個人的な考えだけど、
・いちばん危険な浜岡原発を止める。
・稼動30年を過ぎた老朽原発は(福島のように)稼動延長せず、順次止める。
・新たな建設はしない。
といった段階的な脱原発プログラムなら、かなりの人の賛同を得られるのではないかな。その間に風力、太陽光、地熱といった地域分散型代替エネルギーの開発を急ぐ。代替エネルギーが電力需要のどれくらいをまかなえるのかは、論者によって十分にまかなえるという意見から、環境条件に左右されるので安定的供給は無理という意見まであって、どれが正しいのか今のところ僕には判断できない(それ以前に、節電騒ぎで電力のかなりの無駄遣いが明らかになったのだから、そもそもどの程度の需要が適当なのかの議論も大切)。
いずれにしろ代替エネルギーを最大限にすることが必要だし、水力も大規模なやつでなく市町村単位、あるいは集落単位ならまだまだ立地できるし、環境への負荷も少ないのではないかな。それらを地域分散型に配置するには「スマートグリッド」的なシステムが求められるから、9電力会社が発電・送電・配電を独占している現在の体制が適当なのかどうかも議論しなければならないだろう。
ジョン・ダワーはこうも言っていた。
「敗戦直後は、親や夫などの家族を失った人々が日本中にあふれていました。家もないし、職もない、何もかも失った人々が、よりよき生活を求めて必死に日本を再建したのです。政府だけではありません。あらゆるレベルで信じられないほどの活気あふれる精神がありました。その精神を、日本人はその後の繁栄の中で失ってしまった。ふつうの人々が政治に積極的に参加する、そんな参加型民主主義の精神を取り戻してほしいと思います」
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