大西順子を聴く
大西順子をライブで聴くのは何年ぶりになるだろう(2月26日・表参道BLUE NOTE)。
バークリーを出てジョー・ヘンダーソン・カルテットのピアニストを務めたりテレンス・ブランチャードと共演したりして帰国したのが1992年。たしかその年か、翌年あたり、六本木のアルフィーへ聴きにいった。
嶋友行(b)、原大力(ds)のトリオだったと思う。早くて力強いごりごりのピアノで、音だけ聴いているとアフリカ系の男のピアニストとしか思えない。途中、店のオーナー・日野元彦が、オレにも叩かせろと言って原に代わって入った。そのくらいの迫力があった。
それから20年近く。2000年から7年間はジャズの現場から姿をくらましていた。復帰してアルバムを2枚出しているけれど、それは聴いてない。
Reginald Veal(b)とGregory Hutchinson(ds)のトリオ。うーん、ずいぶん変わっていましたね。曲は大西のオリジナルが多い。いわゆるジャズっぽいリズムとフレーズを極力抑えた演奏。かつての大西とは違ったソフトなタッチや、はっとするような沈黙の間もある。美しいメロディもある。低音をがんがん叩くのは昔と変わっていない。途中、1曲だけ、ドラムにそそのかされて、かつての大西順子のごりごりのピアノも聴けた。変幻自在。そんな印象を受けた。
沈黙している間、「自分の音楽」を模索していたんだと思う。デビュー当時のピアノは、日本では評価されたけど、アメリカにはこのクラスのピアニストはざらにいるし、誰のものでもない個性も、彼女自身の自己評価としていまひとつだったんだろう。どんなにうまいジャズをやっても、所詮はアメリカ人ジャズマンの真似にすぎない。才能ある日本人ジャズ・プレイヤーが突き当たる疑問に、大西順子も捉われたのかもしれない。
かつての大西順子を期待するとはぐらかされるけど、新しい大西順子をもう少し追ってみたい。
Comments
ライブにご来店有難うございました。
この先なにやっても所詮アメリカ人のマネで終わりますよ。
たった2日でよくあそこまでこのトリオはある種まとまったな、というか、ある種の音楽が出来たもんだと我ながら感心してます。もちろんサイドマンが素晴らしいので。
私は何も特別じゃないですから。ざらにいるどころかそれ如何ですから。模索もしてないです。特に。
そんなレベルで一生終わると終わります。
Posted by: Junko Onishi | March 04, 2011 12:45 AM
コメントをありがとうございました。
大西さんをライブで聴くのはおよそ20年ぶりでした。実は復帰されたことをつい最近まで知らなかったもので、まず元気なお姿に嬉しくなりました。失礼ながら新しいアルバムを聴いておりませんでしたので、久しぶりにライブを聴いた感想をそのまま記しました。
ブログにも書きましたが、これまで感じたことのなかった美しさを感じる瞬間がありました。それをジャズと言うのかどうかはどうでもいいと思いますが、これがどのような世界に結晶していくのか、もっと聴いてみたいと思いました。評判の「バロック」をさっそく聴いてみましょう。
次のライブにも伺わせていただきます。
Posted by: 雄 | March 04, 2011 12:01 PM