人災なのか?
a man-made disaster(?) at the Fukushima
庭のレンギョウ。
政府は福島第1原発について、「予断を許さない状態」と言っている。1号機から3号機までのタービン建屋に、高濃度の放射能に汚染された水がたまっている。これが何を意味しているのか。原子力資料情報室の会見で元原発技術者が解説しているが、1号機では圧力容器か配管が損傷し、そのなかに閉じ込めておかなければならない冷却水(高濃度に汚染されている)が漏れ出した冷却材喪失事故が起こっている可能性があるという。
1号機については政府発表のデータからそれが読み取れるが、3号機も同じような事態になっている可能性がある(後記:2号機タービン建屋にたまった水からも高濃度の放射線物質が検出された)。また圧力容器の底が一時、設計時の想定以上の熱を持ったが、冷却水が減ったために露出した燃料が溶け出し、底にたまっている可能性があるという。ここから先は素人考えだから間違っているかもしれないけれど、これが進行して圧力容器や格納容器の底を破壊することになれば、いわゆるチャイナ・シンドロームという最悪の事態になるのではないか。
まずは汚染された水を排出し、漏れ出した個所を見つけて修復し、冷却機能を回復させなければならない。時間との戦いになっている。現場で危険な作業をつづけている技術者・作業員に心からの敬意を表し、成功を祈るしかない。
ところで河野太郎のブログに「原子力をめぐる不透明さ」という記事が出ている。
環境エネルギー政策研究所 田中信一郎客員研究員の『「未曾有の津波」は東京電力を免責するのか―土木学会指針と電力業界の関係―』という報告書を紹介しながら、「東京電力は、土木学会が出した指針に基づいて津波の高さを想定していたが、今回の津波はその想定を大きく超えるものだったと言っている。ところがこのペーパーは、指針を策定した土木学会の原子力土木委員会津波評価部会は、電力会社とその身内が大半を占めていて、『第三者性』が疑わしいという」と書いている。
それを見ると確かに、「学会」と名乗りながら「津波評価部会」の委員には東電はじめ電力会社の社員がずらりと並んでいる。主査は東北大学の研究者だが、元は建設省の役人だ。誰が見てもこれを第三者とは言わない。
数日前のニューヨーク・タイムズweb版には、稼動して40年を経た福島第一原発を原子力保安院が点検し、さまざまな不具合はあるが改善することにして運転にお墨付きを与えたのは地震・津波の直前だった、との記事が出ていた(探したけれど見つからない)。添付されていた保安院のペーパーもさっと見たが(専門用語ばかりで素人にはさっぱり分からない)、老朽化した第一原発にお墨付きを与えた責任者は、いまNHKでいちばんよく顔を見る東大教授だった。
原子力資料情報室の仮説や津波のお手盛り基準とあわせて考えると、この事態は人災の要素がいよいよ強くなってくる。
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Comments
このNYTの記事、私も探しているのだけれど見つからない。
検索語としてはNISA(保安院)以外になにが考えられる?
Naoto Sekineは該当なし。
Posted by: Toshio TAKAMI | March 29, 2011 03:04 PM
見出しには確かexpansionとかdespite warningとかあったと思うんだけど、検索しても出てこない。保安院のHPを探せばペーパーは出てくると思うんだけど、こちらもざっと見た限りでは出てこなかった(あるいは原子力安全委員会だったか?)。
Posted by: 雄 | March 29, 2011 03:38 PM
この東大教授はSekine? Hayano?
Posted by: Toshio TAKAMI | March 29, 2011 04:16 PM
これだな。
原子力安全委員会の審議資料
2月7日に承認されている。
主査:関根直人(東大大学院教授)http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan008/siryo5.pdf
Posted by: Toshio TAKAMI | March 29, 2011 04:38 PM
あ、これこれ。専門家が読めば、いろいろ問題点が出てくると思うけどね。
Posted by: 雄 | March 29, 2011 05:32 PM