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February 05, 2011

『ソーシャル・ネットワーク』 ビリオネアの空虚

Social_network
Social Network(film review)

ハリウッドはアメリカン・ドリームを体現したミリオネア(今はビリオネア)の伝記映画が大好きだ。古典の『市民ケーン』がそうだし、新しいところでは『アビエイター』(ちっとも新しくないか)とか、負のミリオネア映画ともいうべき『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』とか。『ソーシャル・ネットワーク(原題:The Social Network)』も、そんなミリオネア映画の一本。デヴィッド・フィンチャーは『セブン』に始まり『ファイトクラブ』とか『ゾディアック』とか、ミステリアスなカルト映画をつくる監督というイメージが強かったけど、ここではオーソドックスな映画づくりで、しかも成功してる。

冒頭、主人公でハーヴァード大学の学生マーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)が、パブでガールフレンドのエリカ(ルーニー・マーラ)と口論になる。ざわざわしたパブの中で交わされるそのセリフの早いこと、言葉数の大量なこと。その畳みかけるようなリズムに引き込まれる。そこから、マークが学内で女子大生格づけサイトを立ち上げ、当局から処分をくらい、やがてfacebookを立ち上げ、さらに元の仲間から訴訟を起こされる経緯を、セリフも映像も早いリズムで物語ってゆく。

まあ、学内サイトを立ち上げるのも仲間割れするのも大学生のサークル活動の話だし、それがあっという間に資金1000ドルが2万ドルに、50万ドルに、さらに巨額にふくれあがっていくのがいかにもITバブル時代の話であることを別にすれば、話自体はそれほどドラマチックなわけじゃない。

元仲間との訴訟も法廷でなく調停の場でのやりとりで、しかも結局は金で和解するわけだから、こちらもドラマとしては欲求不満の展開。にもかかわらず、facebookが巨大になってゆくのを追いかける画面から眼が離せなくなるのは、フィンチャーの見事な演出力によるんだろう。

この映画の原案は、マークがビリオネアになるまでを追ったベン・メズリックのノンフィクション『ジ・アクシデンタル・ビリオネア』だけど、マークはメズリックの取材に応じなかった。その代わりこの本には、マークの元仲間で後に訴訟を起こしたエドゥアルド・サヴェリン(アンドリュー・ガーフィールド)がコンサルタントとして名を連ねているという(wikipedia)。

そのせいかどうか、フィンチャーはいかにもコンピュータのオタクであるマークにややシニカルな眼差しを向けている。大金をめぐる訴訟の協議の場でも議論に興味を示さないし、ビリオネアになっても服装に無頓着。女たちとのパーティーにも無関心で、ラストシーンでは別れたガールフレンド、エリカがfacebookに登録したホーム・ページに見入り、メッセージを送ろうか迷っている。そのラストシーンに続けてエンドロールでビートルズの「ベイビー、ユウ・ア・リッチ・マン」がかぶさり、ビリオネアの虚無、というほど大げさでないけれど、ビリオネアの空虚が印象づけられる。

この映画を見たマーク・ザッカーバーグ本人は、映画には不満だけど、着ているものはあの通りだったよ、と言ったらしい。映画は当然のことながらフィクションの部分も多いから、その「嘘」に怒りつつ、マークを演ずるジェシー・アイゼンバーグの服装に無頓着なオタクっぽい雰囲気にまんざらでもなかったのかもしれない。

とはいえまだ26歳で、現役ばりばりのマークを実名で主人公にした映画だから、死者であるビリオネアを素材にするようにはドラマチックにつくりこむわけにいかない。シニカルにビリオネアの空虚を描くあたりがせいぜいだったかも。よくできた映画ではあるけれど、その軽さが限界でもあり、よくいえばこの時代の空気を反映している。

ところで、僕は2年前からfacebookに参加しているけれども、プロフィール欄に「交際ステータス」というのがある。僕の場合は「既婚」だけど、選択肢には「独身」とか「交際中」以外に、「オープンな関係」「複雑な関係」なんてのもある。「恋愛対象」を男性か女性か、チェックを入れる欄もある。へぇー、と思っていたけど、映画を見てなるほどと思った。

マークは後に訴訟を起こされる学生から、「ハーヴァード・コネクション」という学内出会い系(?)サイトの立ち上げへの協力を求められた。「交際ステータス」とか「恋愛対象」はそういう出自の名残なんだな。

そんな出自からスタートしたfacebookだけど、世界中に広がるにつれてその性格や使われ方も変わってきた。僕は主にニューヨークで知り合った語学学校のクラスメート(ニューヨークにいる者も、自分の国に帰った者もいる)と連絡を取ったり近況を報告しあうのに使っている。

一方、エジプトで反ムバラク・デモの震源のひとつとなった「4月6日運動(6th of April Youth Movement)」のホーム・ページを見ると、日本時間の4日深夜、「追放の金曜日」と名づけられた今日はタハリール広場に人々が終結しており、情勢が緊迫しているのだろう、1時間に何本ものメッセージや写真・動画が刻々とアップされている。残念ながらアラビア語なので読めないけれど、遠く離れていても世界の鼓動を共有していることを実感できる。「いいね!」をクリックすれば、見守っているよと、ささやかな支援の挨拶を送ることもできる。

facebookは、それをつくったマーク・ザッカーバーグの意図を超えて広がっている。


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Comments

TB有難うございました。
映画冒頭5分の会話シーンに引き込まれました。
あまり好きになれないなぁ~友達としては
どうかなぁ~と最初の印象でしたが、
フェイスブックに登録された元彼女にメールを
送った後の行動を見ていると…
最初の印象と大きく変わりました。
孤高の天才ですね。

Posted by: シムウナ | February 13, 2011 at 09:02 PM

こちらこそコメント&TB、ありがとうございました。冒頭のパブのシーンは、すごく好きです。監督のセンスを感じます。この作品の面白さは青春映画でもあることなんでしょうね。

Posted by: 雄 | February 14, 2011 at 11:38 PM

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