『ザ・タウン』 ボストン犯罪映画
The town(film review)
アメリカ映画で犯罪ものといえばニューヨークやロス、サンフランシスコといった大都市を舞台にしたものが多いのは当然だけど、この10年ほど、ボストンを舞台にした犯罪映画も目立つ。
記憶に残るのは『ミスティック・リバー』や『ディパーテッド』、『ザ・タウン(原題:The town)』で監督・脚本・主演を務めるベン・アフレックの前作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』あたりだろうか。『ミスティック・リバー』と『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は共にデニス・ルヘインのミステリーを原作にしていた。
ボストンといえば、ハーヴァード大学を中心に建国初期の富裕層が住む古都というイメージが強いけど、19世紀のアイルランド飢饉でアイルランド人が大量に移住して多くは肉体労働者となり、20世紀に入ってからはアフリカ系はじめエスニックが流入して、貧富の差の激しい都市、つまりは犯罪の多い都市としても知られている。このところの「ボストン犯罪映画」の背景にはそういう社会状況もあるのだろう。
この映画の舞台はボストン北部でアイルランド系住民が多数住むチャールズタウン。街そのものが映画の主役といってもいいかもしれない。時代は多分1990年代との設定だろう。
ダグ(ベン・アフレック)、ジェム(ジェレミー・レナー)ら4人の銀行ギャング団は、チャールズタウンで犯罪を「家業」とする家に生まれ育った幼な馴染。4人が襲った銀行の支店長クレア(レベッカ・ホール)が同じチャールズタウンに住んでいることが分かり、様子を見ようとダグが彼女に接近する。やがてクレアはダグが強盗と知らないまま、ダグとクレアは互いに心を通わせるようになる。同時に、次の大がかりな強盗計画が進行している。
クレアがチャールズタウンに住んでいるという設定は、「ジェントリフィケーション」と呼ばれる現象を背景にしている。1990年代から2000年代にかけて、ニューヨークなどの大都市では古い町やスラムが再開発されて次々に高級コンドミニアムが建てられた。ボストンも同様だったろう。高級コンドミニアムに入ってきたのは若く金回りのいいヤッピーたちで、この映画でもダグたちは新住民のヤッピーを「トゥーニーズ」と呼んで敵対意識を持っている。クレアもそんな「トゥーニーズ」のひとり。
チャールズタウンにはダグたちアイリッシュ・ギャングだけでなくアフリカ系ギャングもいて、互いに敵対している。この映画でアフリカ系は「プロジェクト」と呼ばれる貧困層向け公共アパートに住んでいて、クレアが通勤途中でアフリカ系にいやがらせされたことから、ダグたちは「プロジェクト」に殴りこみをかける。
(以下、ネタバレです)『ザ・タウン』はそんな地域の変化と住民同士の対立を背景にした、愛と友情の相克の物語だ。もっとも原作(チャック・ホーガン『強盗こそ、わが宿命』)がそうなっているのだろうが、友の死、恋人との別れ、タウンからの脱出といった筋書きのなかで、その相克が突き詰められるわけではない。
最近は女性読者も多いとはいえハードボイルドはもともと男のエンタテインメントだから、男が心地よく読んだり見たりできる設定や筋書きのものが多い。僕もハードボイルドが好きだけど、映画や小説を楽しみながらも時にその男性中心主義に不満を覚えることもある。
この映画にも良くも悪くもそんな甘さがある。ラストシーン。タウンを脱出したダグにとって、ジェムは死んだが友情が壊れたわけでなく、恋人とは別れたが互いの愛は続いていて、いつか会うことができるかもしれない。そんな結末は快いけれど、あまりにも主人公の男に都合よくはないか。
もちろん強盗シーン、古い町並みを舞台にしたカー・チェイスなどはたっぷり楽しめる。逆に言えば、人間ドラマもアクションもと盛りだくさんすぎたところが、『ミスティック・リバー』や『ディパーテッド』の満足度に及ばなかった理由かも。
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「うん。とにかくよくできているんだ。
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Comments
一瞬、ポスターをみて
ホラー映画だとばかり思いましたが、
違うようですね。。。。
男の尼さんが白塗りして、銃もって、
ギャク映画とも間違いそう。
ベン・アフレックって、ただの美男俳優かと思ってたら、知性派らしくて、へぇーですよね。
監督なんかしたりして
なかなか可愛い顔してるよネ、笑。
Posted by: aya | February 22, 2011 10:36 AM
ポスターは銀行を襲撃するために尼さんのマスクをかぶってるんです。なるほど、ホラーに見えるかも。
ベン・アフレックは『グッド・ウィル・ハンティング』でマット・デイモンと2人で共同脚本を書いてます。2人とも才色(?)兼備というか。監督としてはハードボイルドが好みで、演出は正統派かな。
Posted by: 雄 | February 22, 2011 09:43 PM