オンデマンドで本を買う
神田の三省堂書店本店でオンデマンド・サービスが始まった。近くまで行ったので、覗いてみる。
写真がオン・デマンド・マシン。「エスプレッソ・ブック・マシン」と名前がついている。手前の白い部分は高速コピー機、その向こうでアルミ枠に入った部分がマシン本体で、一言で言えば簡易製本機。その向こうに表紙をプリント・アウトするインクジェット・プリンターがつながっていて、係員が画面を操作している。
本を注文するとデータが送られ、手前の高速コピー機で両面コピーされる。それがマシン本体に送り込まれる。
左上から送り込まれたコピーは、右下の部分にたまる。全ページ揃うと縦向きに立てられ、両側から圧力が加えられる。ページの背に当たる部分に糊がつけられる。その下に、右側のプリンターで出力された表紙が流れてきて、糊のついた本文コピー束に押しつけられ、糊づけされる。本のサイズにしたがって三方が断裁され、できあがり。その間、約10分。
これが出来あがった本。できたてはまだマシンの熱が伝わって温かい。菅原正二『ジャズ喫茶「ベイシー」の選択』(講談社)。1370円。
印刷でなくコピー機からの出力だし、表紙も決められたデザインだから、モノとしての本の魅力は当然ながらない。本文の写真も、コピー機の写真モード程度。綴じ方もコピー用紙の束に糊をつけただけだから、かつての無線綴じ本のように、強く開くとバリッといってしまうかもしれない。係員も、「耐久性はそれなり」と言っていた。でもこういう形で簡単に絶版本が手に入るようになれば、それはそれで役に立つ。もちろん、これを使って自費出版より簡単に自分の本もつくれる。
今のところ、「三省堂オンデマンド」の最大の弱点は、ラインナップされた点数の少なさ。1月現在で、講談社の絶版本、筑摩書房の大活字本など200点弱しかない。絶版本をコンテンツにするなら、主要出版社が揃わないとつらい。ただし、洋書はグーグル・ブックアーカイブと提携して300万点のラインナップがある。
本のデジタル化が進んでいる。今後、長期的に見れば電子書籍リーダーで本を読む機会が増え、一方、紙の本はモノとしての魅力を備えた少部数・高定価になっていくのではないか。その間で、とりあえず紙に出力して本の形にするオンデマンド出版がどう生きていくのか。僕などは「とりあえず本の形にしておきたい」世代だけど、若い人は「自炊」して本を捨ててるようだからなあ。
神保町へ来たら、いつものコース。三省堂から、近くの東京堂書店へ行き、新刊書の棚へ。ここの新刊書の棚は、目利きの店員が棚づくりをしていることで有名。三省堂本店を1階から4階まで回れば小1時間かかるけれど、この棚を10分ほど見れば、硬軟とりまぜそれ以上の新刊情報が得られる。ただし、買いたい本が次から次に出てきてしまうのが難点。今日も与那覇潤『帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史』(NTT出版)を買ってしまった。
そこからぶらぶら古書店を覗きながら神田まつやへ。いつも通りゴマそばを食する。うまい。
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