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December 02, 2010

『わたしの可愛い人 シェリ』 ミシェル・ファイファー讃

Cheri_ver2

僕にとって、この映画を見る楽しみはふたつあった。ひとつはファンであるミシェル・ファイファーに会えること。もうひとつ、20世紀初頭のベル・エポックのパリを再現した、アール・ヌーヴォーの建築や家具の数々を楽しむこと。

ファンなどと言いながら、考えてみるとミシェル・ファイファーを見るのは久しぶりだ。この10年ほど作品が少ないこともあるけど、最後に見たのは『ホワット・ライズ・ビニース』(2000)になる。そのころの彼女の映画は、『ストーリー・オブ・ラブ』にしろ『素晴らしき日』にしろ子持ちの家庭の主婦といった役どころが多く、映画もラブコメふう、しかも出来がイマイチだったこともあって、なんとなし彼女の映画から遠ざかってしまった。そのうち、彼女は家庭を優先させたらしく映画に出なくなった。

僕にとって(いや彼女のファンなら誰でも)ミシェル・ファイファーといえば、1980年代から90年代にかけて、『危険な関係』『テキーラ・サンライズ』『恋のゆくえ』『恋のためらい』『エイジ・オブ・イノセンス』といった映画での美しさと脆さが同居しているガラス細工のような姿にほかならない。

18、19世紀を舞台にした『危険な関係』『エイジ・オブ・イノセンス』の匂うような美女ぶりもよかったし、『恋のゆくえ』や『恋のためらい』でジェフ・ブリッジスやアル・パチーノを相手に、自立したワーキング・ウーマンが恋に揺れ動く姿も素敵だった。なかでも『恋のゆくえ』は何度見ても(家族に馬鹿にされながら5、6回は見ている)、歌のうまさも含めその美しさにため息が出る。

『わたしの可愛いひと シェリ(原題:Sheri)』は20世紀初めのパリを舞台にした「時代もの」で、『危険な関係』や『エイジ・オブ・イノセンス』の系列に属する。この映画も『危険な関係』も監督は同じスティーブン・フリアーズだから、フランス小説の映画化という共通点からも、映画の雰囲気は『危険な関係』の続編みたいな感じ。そして、50歳を超えたミシェル・ファイファーは変わらずに美しかった。1988年製作の『危険な関係』から20年以上たっているのに、友人のayaさんがコメントしてくれたように「透明感ある現役美女」でしたね。

『危険な関係』も『エイジ・オブ・イノセンス』も上流社交界の愛のゲームに翻弄される役どころ。今回は20歳も年下の男シェリ(ルパート・フレンド)を庇護する高級娼婦役ながら、気がつけばシェリにのめりこんでいるあたりは一貫したキャラクターというか、それこそがミシェル・ファイファーの持ち味なんだろうな。その姿も、演ずる役の精神も、切ないのです。

もうひとつの見どころアール・ヌーヴォーは、こちらもため息もの。ココットと呼ばれ貴族や国王クラスを相手にする高級娼婦レア(ミシェル・ファイファー)が住む邸宅は、当時の新興富裕層が住んだ16区のメザラ邸でロケされている。アール・ヌーヴォーの建築家、エクトール・ギマールの設計。もうひとりのココットで、シェリの母であるマダム・プルー(キャシー・ベイツ)が住む広大な館は、パリ郊外のシャトーで撮影されている。

ガラス張りの温室には南の植物が生い茂り、ココットたちが優雅にお茶している。どちらの邸宅も内装は優美な曲線のアール・ヌーヴォーで、家具なども骨董商から集めたらしい。家も庭も家具も、すべて本物で撮影されているのがすごい。ほかにもレストラン、マキシム・ド・パリや避寒地ビアリッツのホテル・ド・パレでもロケされている。

ミシェル・ファイファーとアール・ヌーヴォーに見とれるだけでも十分だけど、中年にさしかかったココットの揺らぎと意地を繊細に描いて、これも久しぶりに見たスティーブン・フリアーズ監督の職人芸の冴えを楽しんだ。もっとも、フランスの作家・コレットの原作を基にフランスで撮影しているけれどスタッフやキャストは英米組だし、全編英語だから、フランス人が見ればなにやら変な映画なのかもしれない。それを言い出すとややこしくなるけど、ミシェル・ファイファーのファンとしては、硬いことは言いっこなしということで。


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Comments

ミシェル・ファイファー健在でしたねsign01

実は、美人なのにブス・デブ役ばかりする「キャシー・ベイツ」も気になる女優です。可愛い顔してるのに、なぜっ!?と。

シェリで「老境のフランス女と年下男との恋愛」を辛らつに書いてるコレットも、このとき50歳。その後義理の息子と恋愛してるんだから、立派です。62歳で二度目くらいの結婚してるし。昔のフランスって、若い男と母親みたいな女のカップルって、結構ニーズがあったようですね。とはいっても、老女の悲哀はこの映画の通りですが。
ミシェル・ファイファーが綺麗すぎて、訳わからない終わり方の映画になりましたcoldsweats02

Posted by: aya | December 05, 2010 at 01:56 PM

最近、女優で見に行く映画が少なくなって、もっとミーハーしなきゃと思ってるんですが、入れ込める女優さんがなかなかいなくて、、、。ミシェル・ファイファー、堪能しました。

キャシー・ベイツは「ミザリー」のイメージが強烈すぎて、それがいまだに尾を引いているんでしょうか。

Posted by: 雄 | December 06, 2010 at 02:11 PM

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