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December 04, 2010

安田南 キュートな歌と笑顔

Sunny

年長の友人・Mさんと飲んでいて、懐かしい名前を聞いた。「やすだみなみ、CD買ったらやっぱりいいんだよ~」。Mさんとは30年以上昔、週刊誌で一緒に芸能ページをつくっていたことがある。Mさんはどちらかというと古いジャズ好き、僕は小生意気に前衛ジャズと好みは違ったけれど、その後のこちらの好みの変化を考えると、Mさんから受けた影響はけっこう大きかったかもしれない。

そのころ、というのは1970年代だけど、安田南は知る人ぞ知るジャズ・シンガーだった。当時人気があったのは笠井紀美子で、安田南はどちらかといえばマイナーな存在。ジャズを歌うだけでなく、黒テントで芝居をやったり、ラジオのDJをやったりもしていた。ライブを聞いたことはないけれど、映像(確か藤田敏八『赤い鳥逃げた?』の主題歌を歌ってたはず)やラジオで接する彼女の歌はふわふわと奇妙な存在感があり、Mさんと「みなみ、いいよね~」なんて話をしたことを覚えている。

何十年ぶりかで、彼女の70年代のアルバム「SOUTH」と「SUNNY」を聴いた。僕の記憶のなかで、安田南は個性的だけどどちらかというと下手くそな歌い手、という思い込みがあったけど、とんでもない、これが実にいいんですね。山本剛トリオ(+大友義雄)のスインギーな演奏に乗せて、みなみは実に楽しげに歌っている。

ときどき音程がはずれたりはする。アドリブも無手勝流だし、英語もお世辞にも上手とは言えない。でもそれもこれも含めて、うまい。なにより歌に彼女のエモーションが、もっと言えば魂が乗っているからだと思う。そんな若い安田南が今も目の前で歌っているような生々しさが素敵だ。

みなみを今聞いて気がつくのは、ヘレン・メリルら白人ジャズ・シンガーをモデルに阿川泰子あたりから始まったんだろうか、「スタンダードを都会的な雰囲気で聞かせる大人の歌手」といった日本のジャズ・シンガーの「型」に、みなみがまったく捕らわれていないことだ。自由奔放なアドリブとリズム感。それが逆に新鮮に聞こえる。

僕は一度だけ、みなみに会ったことがある。1971年か72年、雑誌の新米編集者をしていた時代だった。当時、時代を切り裂く鋭い写真を撮っていた写真家のNさんと有楽町の喫茶店で話をしていたら、小柄な女性が入ってきて、黙ってNさんの隣に座った。僕より4、5歳年上の彼女は笑顔で、「やすだみなみです」と自己紹介した。そのときはまだジャズを歌っているとは知らず、黒テントの劇団員だと紹介されたように記憶する。

ふらりと現れた彼女は、しばらく雑談をして(何を話したか覚えていない。論客だったNさんの話を言葉少なに聞いていたように思う)、Nさんとともにまたふらりと去っていった。後で、みなみは当時のNさんのガールフレンドだったと聞いた。

その後、みなみの歌を聞くたびに、あのときのキュートな笑顔を思い出す。久しぶりに彼女のCDを聞いて、すっかり忘れていたみなみの笑顔が、生き生きした歌とともに蘇ってきた。みなみ、元気にしてるかな。

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Comments

安田南が今、雄さんのブログに出てきますか。コメントせずにはいられないですね。
 私もつい先日、最近あるライブ会場で知り合いになったNさんといきつけのジャス喫茶で長時間のジャズ談義をしているうち、何かの流れで安田南の話題になり、「彼女、どうしているんだろうね。」と問うと、彼から「所在不明だそうですよ。」と聴いたばかりでした。今年1月に亡くなった浅川マキとほぼ同年輩ですよね。
 つい1週間程前、古いカセットテープを整理していたら安田南の『Some Feeling』(黒テントの劇中歌などを集めたアルバムです。)というアルバムのテープが出てきて、懐かしくなって何度も聴きました。そのテープの中に「赤い鳥逃げた?」「お定のモリタート」の2曲をアルバムにプラスして録音していました。Nさんが安田南の「お定のモリタート」が聴きたくて探しているということだったので、そんなテープが見つかったとメールしたばかりでした。
 それこそ30数年前に、九州のライブで安田南を聴いたことがあります。知り合いの店だったので、ライブの後で一緒に飲んで、皆で彼女の泊まっているホテルまで歩いて送ったいったことを思い出しました。
 ネットで知ったばかりですが、「プカプカ」という歌のモデルは安田南なんだそうですね。
本箱を探したら彼女が書いた『みなみの三十歳宣言』という本を持っていましたよ。
 ところで12月26日・27日、上京して新宿ピット・インの浅川マキ追悼ライブに行きます。出演者がそうそうたるメンバーですよ。
 

Posted by: TO | December 07, 2010 11:51 AM

「赤い鳥逃げた?」に「お定のモリタート」ですか。懐かしい。『Some Feeling』は黒テントの劇中歌集とは知らなかった。今度、聞いてみます。

「プカプカ」のモデルが安田南(と原田芳雄)と知ってしまうと、それ以外のイメージは考えられなくなりますね。そのくらい、ぴったりで。

淺川マキ追悼ライブはほんとにすごいメンバーですね。うーん、行けるかな。

Posted by: 雄 | December 09, 2010 06:02 PM

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