山下洋輔ニューヨーク・トリオを聴く
山下洋輔(p)、セシル・マクビー(b)、フェローン・アクラフ(ds)の山下洋輔ニューヨーク・トリオは1988年に生まれた。最初のアルバム「クレッシェンド」(1988)から「プレイズ・ガーシュイン」(1989)あたりまでは、スタンダードを山下洋輔流に演奏する、その意外さが新鮮だった。特に「プレイズ・ガーシュイン」は今でも好きで、ときどき聴くことがある。
でも「クルディッシュ・ダンス」(1992)になると、全曲が山下のオリジナルになり、以後、NYトリオはスタンダードという側面(僕がそう思いこんでいただけかもしれないが)はだんだん薄くなっていく。日本での山下の活動が、トリオから他ジャンルのミュージシャンと演奏する「異種格闘技」へと重点を移していったことと関係あるかもしれない。いまでは山下トリオといえば、NYトリオがまず頭に浮かぶ。
CDではなじんでいたけれど、NYトリオをライブで聴くのは初めて(10月28日、晴海・第一生命ホール)。ジャケットで見ていたより、セシル・マクビーはずいぶん年を取っていた。
今回のライブもアンコール以外、全曲が山下のオリジナル。近く発売する新しいアルバムのために録音した曲が多いらしい。
「フライト・フォー・ツー」で、いきなり山下洋輔のいつもの世界が爆発。CDではセシルもフェローンもおとなしめのバッキングという印象があったけど、山下に合わせて激しい。「廃屋のアリア」という、ややメロディアスな曲もよかった。1stセットの最後は、おなじみの「クルディッシュ・ダンス」。この曲は異教的なメロディや弾むようなリズムが素晴らしい。
2ndセットでは金子飛鳥ストリングス(室内楽カルテットの編成)が加わる。金子飛鳥のヴァイオリンは、クラシックの優雅さと違って、力強く攻撃的な音。山下のピアノによく合う。
「ジャズ・ミュージシャンなら誰でも一度は『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』みたいにストリングスの調べに乗って弾いてみたいもんです」と言って演奏をはじめた「エレジー」は、山下には珍しい、でもやっぱり山下洋輔以外の誰でもないバラードだった。山下洋輔のバラードを聴いたのは初めてかもしれないな。たっぷり楽しんだ2時間でした。
Comments
私も「プレイズ・ガーシュイン」は好きですね。丁寧に弾いているけれども、抑え気味に山下色は出てきて、そのはじけるあたりがいいですよね。
山下洋輔は勿論、ライブが一番で、レコードやCDを買って聴く気にはなりませんね。
唯一「SUNAYAMA」(坂田明・小山彰太の時代)というレコードと浅川マキのバックでやった「MAKIⅥ」「ONE」というレコードを持っているだけです。
ところで雄さんは、「ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡」という映画を御覧になりましたか。コンゴの障害者を中心としたロックバンドのドキュメントです。
私は10月29日に福岡市で見ましたが良かったですよ。
映画が終わって上映関係者に聞きましたが、このロックバンドの来日ツアーが今年の9/25~10/17(全国12ステージ)にあったんだそうです。
福岡市でも、つい10月13日にコンサートがあったそうですが、私は全く知りませんでした。残念。
話によると、コンサートの入りは悪かったみたいです。
東京は日比谷野音と三鷹市公会堂でやっています。御存知でしたか。
Posted by: TO | November 04, 2010 10:23 PM
山下トリオ(に限らずフリー・ジャズ)は聞く音楽というより、その場で参加する音楽ですね。僕も山下洋輔がスタンダードを弾いているのが楽しくてNYトリオの初期のCDを買いましたが、オリジナルばかりになってからはとんとご無沙汰です。
残念ながら「ベンダ・ビリリ」は見ていません。予告は見たのですが。コンサートも知りませんでした。全国紙レベルでは記事も広告もなかったように思います。残念でした。映画はどこかで上映するかもしれませんね。注意してみることにしましょう。
Posted by: 雄 | November 05, 2010 07:51 PM