新・嶋津健一トリオ
嶋津健一の新しいトリオを聞きにいった(赤坂・Relaxin’)。
それまでのトリオのメンバーは加藤真一(b)、岡田佳大(ds)で、6年近く固定されていたと思う。CDを4枚出していて、最初はスタンダードのバラードが中心。徐々に嶋津のオリジナル曲が増えていった。
嶋津はバラードが好きで、このトリオの1枚目のアルバムも「All Kinds of Ballads」というタイトルだった。嶋津のバラードはいつ聞いても惚れ惚れする。「Sunflower」にしても「Close Enough for Love」にしても、テーマから徐々にエモーションが高まってゆく彼の美しいアドリブを聴いていると、別の世界に連れていかれるような瞬間がある。そんな嶋津のピアノを加藤のよく歌うベースと、岡田の「メロディアスなドラム」(嶋津)が支えていた。
一方で嶋津はこの数年、かなりの数のオリジナル曲を書いてきた。彼のピアノの弟子であり音楽仲間でもあった作家、中島梓(栗本薫)の死を悼んだ「Tender Road to Heaven」などを聞くと、美しい、でもこれはもうジャズじゃないなと感ずることもあった。他のオリジナルもそうだ。それがジャズと呼ばれようと呼ばれまいと構わない、ただ美しい旋律をつくり、それをジャズのピアノ・トリオという形式を借りて表現している。そんなふうに思えた。
そんなふうにグループとして完成したと感じていた旧トリオとは別の新しいトリオを、なぜ嶋津がつくったのかは知らない。今度のメンバーは池田聡(b)、勘座光(ds)と、ぐっと若いミュージシャン。もっともこれでメンバーが固定されたのかどうかも分からない。演奏は嶋津のオリジナルが中心だった。
旧トリオと違うのは、オリジナルと言ってもアメリカ時代につくった古い曲と最近の曲が半々に演奏されたこと。嶋津は1985年にアメリカに行き、ジミー・スコット(vo)のグループで音楽監督を務めるなど10年間、向こうで活動していた。その時代の嶋津のオリジナルは、今度はじめて聴いた曲も多いけど「Maple Avenue Jive」とか「Harapeko」とか、いかにも黒人ジャズふうな、時にバップふうな、リズミカルなものばかり。
いかにもジャズっぽい古いオリジナルと、ジャズとは言えないかもしれない新しいオリジナルと、その合間に最近の彼が好んで弾くスタンダード「I Will Wait for You(シェルブールの雨傘)」なんかをはさんで、たっぷり楽しませてもらいました。
嶋津の原点に戻ったという感じの若いトリオ。まだ旧トリオの自由自在な成熟には遠いけど、新トリオの音楽がどう成長していくのかが楽しみ。


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