中村誠一を聴く
地下の穴倉から上をのぞいてる写真で何だか分からないと思うけど、中村誠一・大森明スペシャルユニットの5人が演奏中。ピアノを弾く嶋津健一の顔だけがかろうじて映っている。
3年前まで習っていたピアノの師匠、嶋津先生(と、ここだけ敬称。あとは先生ではなくミュージシャンとして敬称略させていただきます)が中村誠一と共演するというので吉祥寺のSOMETIMEへ出かけた。店内は満員。露出させた鉄骨がいい雰囲気だ。
中村誠一といえば山下洋輔トリオの初代サックス。40年も前の1970年前後、新宿のPIT INNで何度も聴いたことがある。なかでも大晦日のオールナイト・ライブで、自殺した阿部薫と元日の朝まで壮絶なサックス・バトルを繰り広げた記憶は今も鮮明だ。
その後、山下トリオを離れた中村はオーソドックスなジャズをやるようになった。トリオを離れた数年後、一度だけ浦和のジャズ・クラブで50年代ふうのサックスを、山下トリオみたいな演奏ばかりやってたらこういうのをやりたくなるんだろうなあ、と思いながら聴いたことがある。久しぶりに聴いたのは去年の夏、山下トリオの歴代メンバーが集まった復活コンサートで(山下トリオだからフリーの演奏を)なつかしく聴いた。
この夜の演奏も、50年代のスタイル。いま、このスタイルで演奏するたいていのミュージシャンはどこか現代風な味付けをするけれど、中村誠一はそういう色気を見せないのが素敵だ。そのかわり、ゆったり吹くテナーやクラリネットの音がなんとも色っぽく、艶がある。嶋津作曲のバラードをクラリネットで吹いて、クラリネットってこんな豊かに感情のかすれまで表現できるのかと思った。ほかにもホレス・シルバーやジェイ・マクシャンの曲に聴きほれる。
共演した大森明(as)を聴くのは初めて。中村より乾いた音を出す。でも自作の「City Lights」はド演歌みたいにベタなメロディだったなあ。
嶋津健一は彼自身のトリオで聴くことが多くて、サイドメンで入ったのを聴くのはしばらくぶり。自分のトリオでは自分がやりたいもの、やりたいことをやるけど、サイドに入るとリーダー(今日は中村誠一)のやりたい音楽につきあう。50年代ふうにリズミカルで黒人ぽいピアノはふだん聴けないから楽しい。たまにはこういうサイドもやってよ、嶋津さん。
Comments
中村誠一、いいですねえ。昔からのファンです。音に艶がありますよね。
今まで、4回ライブを聴いたことがあります。前の2回は、山下洋輔トリオのメンバーの頃で、3回目が77年の別府城島高原での野外ライブ。この時はジョージ川口4のメンバーでした。タモリの司会で、山下洋輔3も出演しましたが、サックスは坂田明でしたね。
最後が、昨年夏に雄さんと御一緒しました日比谷野音での復活コンサートです。久しぶりに聴きましたが、元気にバリバリ吹いてましたね。
このコンサートがDVD化されているのは御存知ですか。タイトルが『ダブル・レインボウ』ですよ。この虹のことはブログでも紹介されてましたよね。買おうかどうか迷ってますが。
7月初めに、こちらで川嶋哲郎3(彼のサックスもいいですね。)のライブがあって、終わって話す機会があり、「中村誠一が好きだ。」と言ったら、同じ大学で教えているということでした。
ところで娘さんが御結婚されてそうで、おめでとうございます。ひと安心ですね。
私の方は、一人独身の娘を抱えていますが、結婚はまだまだのようです。
Posted by: T,O | August 12, 2010 11:25 AM
中村誠一、ほんといいですね。
彼は私と同年です。20歳前後で山下トリオを聴いて、自分と同年齢の人間がもうこんな最前線で吹いているんだなと羨望のまなざしで見たことを思い出しました。当時、自分と同年で名前が出ていたのは中村誠一と、ぼつぼつを小説を発表しはじめていた中上健次でした。
去年のコンサートがDVDになっているのですか。欲しいです。10月には山下洋輔NYトリオのコンサートがあるので、さっそく予約を入れました。
Posted by: 雄 | August 13, 2010 11:38 AM