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June 26, 2010

『クレイジー・ハート』 ジェフとマギー讃

Crazy_heart

テキサスやニューメキシコなど西部の町々をドサ回りするアル中のカントリ・シンガー、バッド(ジェフ・ブリッジス)は、かつての人気歌手。サンタフェのライブで地元の女性ジャーナリスト、ジーン(マギー・ギレンホール)の取材を受け、親しくなって一夜を共にする。翌朝、バッドはかつての弟子で人気シンガーになったトミー(コリン・ファレル)の前座を務めるためにフェニックスへ旅立つ。

コンサートを終えたバッドは、帰途、砂漠のハイウェイ脇にある公衆電話からジーンにダイアルする。これからそっちに行きたい、と。ジーンは、答えるまでのほんの1秒か2秒、なんとも微妙な表情を浮かべて逡巡する。バッドとのことを、一夜の思い出として記憶のなかに収めておくのか、それとも新しい愛に踏み出すことになるのか。バッドもジーンも結婚に失敗した過去を持ち、ジーンには4歳の息子もいる。

ベージュの土壁が印象的なサンタフェ様式の住宅。明るい窓際で、受話器を持ったジーンが放心したようにも見える逡巡の横顔を捉えた1秒か2秒のショットが素晴らしい。しかもクローズアップしたり長回しして強調するわけでもなく、注意しなければ見過ごしてしまいそうな、さりげない撮り方なのがにくい。スコット・クーパー監督(脚本も)のデビュー作だけど、きっと大人の映画をつくれる監督なんだな。

(以下、ネタばれです)結局、バッドとジーンは愛し合うようになり、息子のバディもバッドになつき、でも息子とアルコールをめぐってある出来事が起きて、2人は別れる。

……と、このあたりは予想がつく展開だけど、最後がハリウッド映画のように並みのハッピー・エンドで終わらないのがまたいい。それぞれの道を歩き始めた2人の会話が、サンタフェの砂漠の空に融けてゆく(ロケは砂漠の丘上に建つサンタフェ・コンサートホール)。そういえばジェフ・ブリッジスとミシェル・ファイファーの『恋のゆくえ』(何度見たことか)も、別れたジェフとミシェルが路上で会話を交わすビターな味わいで終わっていた。

ディテールがすごく効いてる。ライブ会場がボーリング場のバーだったり、車で会場に着いたジェフがポリ容器にためた小便をまいたり(アメリカで立小便が見つかると留置されることもある)、バッドのファンだったデリのおやじにウィスキーを1本おごられたり、そのウィスキーで酔ったバッドが演奏の最中に気分を悪くし、歌うのをやめてゴミ容器に吐いたり、ドサ回りのわびしさを漂わせるジェフ・ブリッジスが絶妙。

1949年生まれのジェフ・ブリッジスは僕より2歳年下だけど、同世代的な共感をいちばん感ずる役者なんですね。初めて見たのは40年近く前の『ラスト・ショー』。田舎町の高校生役だったけど、以来、『サンダーボルト』の小生意気なあんちゃん、『800万の死にざま』のハードボイルドな探偵、『アメリカン・ハート』のダメな父親、『ビッグ・リボウスキ』ではあっと驚く肥満体になってみせ、作家を演じた『ドア・イン・ザ・フロア』では妻役のキム・ベイシンガーとの葛藤がリアルだった。

強烈な個性派ではないし、決してうまい役者でもないけれど、同じ時代を生きてきたんだなあ、という感慨がある。僕はアカデミー賞に大して興味がないけど、ジェフがこの映画で初めてアカデミー主演男優賞を取ったのは素直に嬉しかった。

それ以上にいいのがマギー・ギレンホール。前作『ダークナイト』ではあまり印象に残らなかったけれど、この作品のマギーはほんとに魅力的だ。4歳の息子を持つシングル・マザーの可愛いさ。不安を抱きながらも、才能あふれるアル中のバッドにのめりこんでいく一途さ。去年見た『レスラー』も似たような、ドサ回りのかつての人気者を主人公にした映画で、相手役のマリサ・トメイがこれまた実によかった。マリサもマギーもいわゆる美人女優ではないけれど、独特の雰囲気と艶っぽさをもっている。この映画のマギーも記憶に残るだろうな。

バッドがつくり、トミーが歌う「The Weary Kind」(これもアカデミー賞主題歌賞を受けた。実際にはライアン・ビンガムとTボーン・バーネットの曲)が心にしみる。


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June 23, 2010

コシロモンドクガの幼虫

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家を出ようとしたら、派手な色の幼虫が目に飛び込んできた。どんな蝶か蛾になるのか……と思って調べたら、コシロモンドクガの幼虫らしい。翅に丸い紋がついた茶色の蛾。ああ、あれか。大人になると地味なのに、派手だね君は。


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June 15, 2010

浦和ご近所探索 常盤緑道

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わが家のそばから別所沼まで約2キロ、常盤緑道がつづいている。4コースある散歩道のひとつ。

この緑道は小生ガキのころ、小さな川だった。といっても1950年代にもうコンクリートで固められ、生活廃水が流れ込むドブ川だった。フナやメダカはもちろん、ザリガニすらいなかった。フナやメダカを取るためには別所沼か、今は新幹線と埼京線が通っている大戸田んぼまで遠征しなければならなかった。

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小学校へあがる年齢で浦和を離れたので、このドブ川がいつ暗渠になり、上が緑道になったのか記憶がはっきりしない。多分、1960年代だと思う。

このあたりは標高十数メートルの大宮台地の南端にあたり、いくつもの台地と谷(といっても標高差数メートルだが)が入り組んでいる。ドブ川が流れ込む別所沼周辺の低地は7000年前には海岸だった。「浦和地質模式断面図」を見ると、わが家から3分ほどの旧中山道が台地の尾根道にあたり、そのあたりからわが家の脇を通って別所沼まで谷になっている。

浦和はかつて地下水が豊富で、上水道の何分の一かは地下水でまかなっていた。夏は水道水が冷たく、うまかった記憶がある。ほかに水源はないから、おそらく旧中山道近くの尾根から地下水が湧き出て、小さな流れになり別所沼に流れ込んでいたんだろう。

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緑道の下はどうなっているのか。浦和区役所に行って聞いてみたら、暗渠の川ではなく、下水道部門が管理する下水道になっている。

「今は地下に閉じ込めた川をもう一度外に出して、かつての流れを再現する動きがいろんな自治体で出てるじゃないですか。ここはそういう可能性はないの?」と聞いたら、「下水道になってますからね。ほかの地域の下水も流れ込んでいるし、すぐにどうこうするのはむずかしい」との答え。

小生の記憶のなかでもドブ川だけど、生活廃水をなんとかして小さな流れのある遊歩道にしたら、住宅地のなかの風景として素敵だと思うんだけど。

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緑道に植えられた草花は市が管理している。でも沿道の住民が、自宅の前に好きな草花を植えて「自主管理」しているところも多い。

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別所沼近くでは、緑道の脇をコンクリートで囲んでトンネルになったJRの貨物線が通っている。

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June 09, 2010

浦和ご近所探索 伊勢屋の和菓子

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家から歩いて3分ほどのところに和菓子の「伊勢屋」がある。有名店というわけでもないけど、地元の人たちに愛されている古い店。季節の和菓子は特に人気で、昼過ぎに行くと売り切れていたりする。

朝起きて、ああ、今日は伊勢屋の和菓子が食べたいなと思うと、午前中のうちに買いに行く。こういう店がすぐ近所にあるのが贅沢というものだろう。おかみさんも明るくて愛想よく、商売上手。正月の餅も、わが家は30年来ここで、伊勢屋の餅を食べつけると他の餅は食べられない。

今日は葛うめ。葛のぬめりと、うす甘の餡と、やはりうす甘の梅の実漬けの取り合わせが美味。今右衛門の湯呑と、先日、奈良で買った秋篠焼の小皿で。


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June 08, 2010

紫陽花の季節

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わが家の庭は立て込みすぎているせいか、全体に開花が遅いのだけど、紫陽花の季節になった。この紫陽花は祖母が植えた古いもので、数年前から勢いがなくなり今年はだめかと思っていたけど、小ぶりな花を咲かせた。淡い青が好きだ。

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こちらの額紫陽花は逆に勢いがよすぎて、周囲を圧倒している。

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南天の花がもうすぐ開きそう。

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畑に播いた種もようやく芽を出し、大きくなってきた。これはゴーヤ。

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きゅうり。

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トマト。

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