古楽器を聴く
寺崎百合子さんの展覧会「音楽」については、4月12日のエントリ「鉛筆の力」で書いた。この個展のために彼女が描いた古楽器、ヴィオロンチェロ・ピッコロ・ダ・スパッラによる演奏会があった(4月30日、銀座・ギャラリー小柳)。
ヴィオロンチェロ・ピッコロ・ダ・スパッラの「スパッラ(spalla)」は「肩」の意。通称「肩チェロ」と呼ばれる。写真で分かるように、チェロといってもヴァイオリンを大きくしたような形。革ひもで首にかけ、ヴァイオリンと同じように演奏する。ヴァイオリンより大きいから、弾く姿はちょっと窮屈な感じ。音程はチェロと同じだけど、弦が5本ある(チェロもかつては5本だったが現在は4本)。
ヴィオロンチェロは17世紀イタリアのボローニャでつくられた。当時の楽器はまだ大きさや形が標準化せず、時代や場所によってさまざまな種類のものがつくられていた。ヴィオロンチェロもそのひとつで、バロック時代の絵画に肩かけで演奏する姿が描かれている。数十台がヨーロッパ各地に現存しているという。
写真のヴィオロンチェロは、演奏しているディミトリー・バディアロフさんがつくったもの。コーカサス生まれのロシア人、ディミトリーさんはバロック・ヴァイオリンの演奏家であり、古楽器研究家であり、古楽器製作の職人でもある。
弾いてくれたのは主にバッハで、「無伴奏チェロ組曲」と「ヴィオロンチェロ組曲」から。僕は「無伴奏チェロ」はロストロポーヴィッチの演奏が耳になじんでるけど、チェロの重厚な響きに比べると軽い。チェロのようにズーンと体の芯に響いてくるのでなく、音がごつごつして耳に突き刺さる感じ(共鳴する胴が小さいから当然だろう)。そのかわり、表情が細かくよく動く。バッハがこの楽器のために作曲した「ヴィオロンチェロ組曲」は、その細かくよく動く感じがよく出てたと思う。
バッハが生きていた時代にはこういう音が鳴っていたのか。古楽器の音を堪能した夜でした。


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