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March 30, 2010

聖林寺から三輪神社へ

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若いときから大和盆地へは何度か行っているけれど、このあたりははじめて。大阪で仕事があったので、翌日曜日、難波から近鉄に乗って桜井まで足をのばした。どんより曇っているけど暖かい日。

聖林寺の十一面観音は以前から見たいと思っていた。天平時代の仏像の傑作として有名だ。その姿を和辻哲郎は、「流るる如く自由な、さうして均勢を失はない、快いリズムを投げかけている」と書いた。桜の季節だけれど、拝観者は僕ともうひとりの女性だけ。本堂脇から回廊を昇ると、お堂のなかに十一面観音がひとり立っていた。

僕は仏像の専門的なことは分からないけど、うーん、ふくよかな顔、胸から腰にかけての肉感、すっと立った姿勢、流れるような衣のライン、すべてが魅力的。十一面観音は男性性と女性性をあわせ持つと言われるけれど、山城・観音寺や湖北・渡岸寺の十一面観音がどちらかといえば女性性を感じさせるのにくらべると、この観音さんはどちらにも傾かない。

古典的といえそうな美しさ。この柔らかな優美さを、もっと古い法隆寺の釈迦三尊や韓国や中国の仏像から(そんなに見ているわけじゃないけど)感じたことはない。この時代に、日本のオリジナルを加えた仏像になったということだろう。

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境内からの風景。左奥に霞んでいるのが三輪山。

聖林寺の十一面観音は、もともと三輪神社の神宮寺(神社に附属した寺)である大御輪寺(おおみわでら)の本尊だった。ところが明治初年の廃仏毀釈で寺が壊され、十一面観音も雨ざらしのまま放置された。それを惜しんだ関係者が大八車に乗せて聖林寺まで運んできたという。聖林寺は代々、大御輪寺の住職が引退して住む寺だったから、その縁で避難させたのだろう。

三輪神社からここまでおよそ6キロ。春の日差しだし、観音さんが大八車に乗せられてきたコースを逆に歩いてみることにした。

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聖林寺は大和川の支流に沿い、小倉山の麓にある。川沿いに桜井の市街地を目指して歩く。

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市街地を過ぎ、近鉄の踏切を渡ってしばらく歩くと海石榴市(つばいち)跡に出る。7世紀ごろ、ここには海石榴市と呼ばれる大きな市があった。竹ノ内街道、山辺(やまのべ)の道など何本もの街道が交差し、大阪湾から大和川をさかのぼる海運の港でもあったから、交易の中心地として栄えた。

遣隋使もここから出かけ、また帰ってきたから、中国文明の玄関口であり、仏教もここに上陸した。

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「日本書紀」によると552年、百済の使者が釈迦仏と教典を携えてこの港に上陸した。使者は港近くの磯城嶋金刺宮に向かい、仏と教典を奉ったという。写真が磯城嶋金刺宮と伝えられる場所。今は桜井市の水道局になっている。かつては保田與重郎の筆による碑があったようだが、現在は別の場所に移され、何もない。

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大和川沿いの道で遊んでいた子どもたち。

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海石榴市からは山辺の道を歩く。三輪山の麓に沿って古道が整備されており、散策する人もぐっと多くなる。

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聖林寺に移された十一面観音を本尊としていた大御輪寺は廃仏毀釈で壊されたが、今は平等寺として再興されている。十一面観音はここから200メートルほど昇ったあたりに放置されていたという。

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三輪神社は三輪山全体が神体であり、だから本殿のない神社として有名だ。神が山や岩や木に降り、そこが聖なる場所とされた古神道の面影を伝えている。やはり場所そのものが聖域で建築物を持たない沖縄の御嶽(うたき)や済洲島の本郷堂(ポンヒャンダン)とも共通するところがある。

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摂社(三輪神社に附属した神社)のひとつ狭井神社。いかにも山そのものを祀っている感じ。

三輪神社に本殿はないけれど拝殿があり、お参りに来た人たちはそこで手を合わせる。拝殿の裏、神体である山との結界にあたるところに三ツ鳥居と呼ばれる鳥居があるという。

見学させてもらったら、三つの鳥居が重なってひとつの鳥居をなしているような建造物。三つなのは、三輪神社の祭神が大物主(おおものぬし)など三体の神であることによる。三ツ鳥居の手前では、神主さんがご神体の山に向かって祝詞をあげていた。


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