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March 22, 2010

浦和ご近所探索 縄文地図

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(「浦和地質模式断面図」~『浦和市史』から。左3分の1あたりを南北に走っているのが国道17号)

面白い地図をみつけた。浦和の地形図を等高線に沿って色分けしたもの。海抜10メートル以上が黄緑や黄色、オレンジといった濃い色で塗られている。10メートル以下は、写真では灰色に見える。

これがなぜ面白いかといえば、今から7~8000年前の縄文時代、地球が温暖化して海面が上昇した。その時代の海面は、現在より5~10メートル高かったとされている。だから大雑把にいえば、この地図で灰色に見えるところは海で、黄色やオレンジ色の部分は陸地だったことになる。これは「縄文時代の浦和」の地図なのだ。

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浦和という地名は、もともと「浦曲」と書いて「うらわ」と読んでいたらしい。白川静『字通』によれば、「浦」は「はま、水のほとり」、「曲」は「まがる、こまごまとした」の意。つまり「浦曲」は「浜が曲がりくねっている」という意味になる。地図を見ると、海岸線の入り組んださまはまさに「浦曲」ではないか。

そこで等高線6~10メートル、つまり縄文時代の海岸線に当たるあたりを歩いてみることにした。いちばん分かりやすいのは国道17号線だろう。

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わが家から3分ほどのところを国道17号線が走っている。それを日本橋方向に20分ほど歩くと「別所坂上」の信号がある。そこからゆったりとした下り坂が200メートルほどつづき、下りきったところに「別所坂下」の信号がある。

地形図によると、別所坂上は標高12メートル前後、別所坂下は8メートル前後。とすると、縄文の海面が最も上昇した時代の海岸線は、この坂下あたりにあったことになる。

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別所坂下の交差点そばに、白幡沼がある。国道17号線が南北に走っている細長い台地と、その東側にあって旧中山道が走っている台地に挟まれた谷の入口に当たる。沼はそんなに古いものでなく、かつて海だったこのあたりの低湿地が新田開発された江戸時代に灌漑用につくられた溜池らしい。

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沼のほとりには、「宝永」(1704~1710)と刻まれた庚申塚がある。

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住宅や学校に囲まれた白幡沼の周りは遊歩道になっている。

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白幡沼から数分歩いたところの高台に睦神社がある。鳥居の建っているところの標高は沼とほぼ同じレベル。そこから石段を数十段上がったところに社殿がある。つまり睦神社は、縄文時代には海に突きだしていた台地の上に建てられている。

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睦神社の鎮守の社には自然林が残っていて、シロダモ、ヤブツバキ、ビナンカズラ、キチジョウソウといった暖地性植物が自生している。境内の案内板には、「これは、この台地の縁辺にかつて太平洋の暖流が打ち寄せており、この地一帯に暖地性常緑広葉樹が繁茂していたことの名残のものです」とある。

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(左端が富士社)

案内板には「睦神社は大宮台地の南縁の舌状台地上にある」と説明されている。高台に立って南を見ると、ヤブツバキやビナンカズラの林の向こうに川口、東京方面が見渡せる。変哲もない住宅地の風景が春霞にぼんやり広がっているだけだけれど、縄文の風景を想像してみる。

いま見下ろしている川口から東京にかけては縄文時代、考古学で奥東京湾と呼ばれる海だった。現在、荒川が流れている流域をまたいで、十数キロ向こうの対岸には赤羽台~王子・飛鳥山~日暮里・道灌山~上野山の連なりが見えていたろう。

近くに貝塚もあるから、このあたりで縄文人が暮らしていたことは確か。大宮にある県立歴史民俗博物館の展示を見ると、対岸の古東京とこのあたりの土器は様式が同じだから、両者の間には交通があったようだ。境内には富士社がある。古東京の背後にそびえる富士が信仰の対象になっていたのだろう(今でも晴れた日にはよく見える)。

睦神社の縁起はよく知らない。でも、この神社が舌のように突き出た長い岬の突端に位置していることは興味深い。中沢新一『アースダイバー』によれば、東京の縄文地図をつくってみると、神社はしばしばここと同じような岬の突端につくられていたという。「縄文時代の人たちは、岬のような地形に、強い霊性を感じていた。そのためにそこには墓地をつくったり、石棒などを立てて神様を祀る聖地を設けた」(中沢新一)。

とすれば、この睦神社も縄文の時代、既になんらかの聖なるものが置かれ、祭祀が営まれていたのかもしれないな。そんな空想をしてみたくなる。


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