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June 13, 2009

黒部峡谷露天風呂巡り

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黒部峡谷へ露天風呂巡りの旅に出かけた。目指したのは黒薙温泉と鐘釣温泉。

JR魚津駅で富山地方鉄道に乗り換え、宇奈月温泉へ。そこから黒部峡谷鉄道、通称トロッコ電車に乗り込む。

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黒部といえば思いつくのはクロヨン・ダム。中島みゆきの「地上の星」じゃないけれど、右も左も無邪気に近代化を信じられた時代の最大の「プロジェクトX」だった。

黒部川はクロヨンはじめ10箇所もの発電所があることから分かるように、電源開発では日本有数の川。トロッコ電車は、もともとダムや発電所の工事用につくられた鉄道だった。宇奈月を出た電車は、さっそく宇奈月ダムの脇を走る。

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黒薙駅で降りると、本線から別れて普段は使われない支線のトンネルがある。数年前まではトンネルを歩いて黒薙温泉に行けたのだが、国交省から「鉄道トンネル内の歩行は罷りならぬ」と無粋なお触れが出て、今は通行できない。

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階段を上り、細い山道をたどること15分、黒部川の支流である黒薙川と、一軒宿の黒薙温泉が眼下に見えてきた。

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山道を下り、宿を見下ろすと高度成長以前、昭和30年代の記憶がふっと現れたような風景。黒薙温泉旅館は昔ながらの木造の宿で温泉巡りの先達、嵐山光三郎兄貴に言わせれば、「穴場中の穴場」の温泉だ。宿はカエデ、クリ、ナラ、ケヤキ、イヌシデ、クルミなど深い落葉樹林に囲まれている。

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黒薙川の河原に、大岩で囲まれた豪快な露天風呂がつくられている。湯は無色透明のアルカリ性単純泉。やや熱い。湯量は豊富で、宇奈月温泉街の湯はすべてここから6km余りを太いパイプで送られているそうだ。

深い谷に囲まれ、急流の音と鳥の声以外なにも聞こえない。他に泊り客もなく、この湯と風景を独占できたのは最高の贅沢だなあ。

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黒部峡谷を歩いていると、日本でそういう体験はほとんどないけれど、地球が生きていることを実感できる。ここは今、雨が激しく山を穿ち谷を刻んでいる最中なのだ。川は深い谷の底を激しく流れ、両岸の崖は実感としては垂直に近く切り立っている。沢のあちこちが崩落して、水が大岩や大量の土砂、樹木を押し流している。写真は宿の向かいの崩落。

そんな地球の営みに人間が巻き込まれると災害ということになるのだが、ここにいると、それも自然の営みにちょっかいを出した人間側の都合にすぎないと思えてくる。クロヨンも「大自然への挑戦」などでなく、その力をちょっと借りているんだと思わないと、思わぬしっぺ返しを食らうことになるかもしれない。

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翌日はトロッコ電車で黒部峡谷を更に奥へ。出し平ダムの脇を通る。

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黒部川が電源開発に利用されたのは、豪雪地帯にあるため水量が豊かで、平均河床勾配1/40(40m流れて高度が1m下がる)と勾配が激しいから。黒部の山と川は地球年齢からいえば若く、荒々しいのだ。

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この日は鐘釣温泉へ。ここも黒部川の河原から湯が沁み出し、岩で囲っただけの露天風呂がつくられている。流れの向こうに見えるのは万年雪。

増水すると川の流れに浸かって風呂が使えなくなり、その都度修理しなければならない。でも入浴は無料。管理しているのは一軒宿の老夫婦で、「もう辞めようと毎年のように話すけど、お客さんに喜んでもらうともう少し続けようって」。

トロッコ電車が終わる夕方には日帰り客も帰り、この日も他に泊り客はなかったから、あたりは人っ子ひとりいなくなる。ぬるめの湯に長時間浸かっていると、皮膚の穴という穴がぜんぶ開いて身体に湯が沁みこんでくる。それだけでなく、見る聞くかぐ味わう触れるの五感がすべて周りの自然に対して開いていき、自分という輪郭があいまいになってゆく気がする。それが快い。こういう経験は一軒宿のこういう温泉でしか味わえない。

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