嶋津健一トリオのレコーディング
ジャズ・ピアニスト、嶋津健一のレコーディングに招待されて出かけた。
2006年に出た『This Could Be a Start of Something Big』もそうだったけれど、嶋津健一トリオの録音にはスタジオに20人ほどの友人・知人が招かれる。もっとも発売されるCDでは拍手などはカットされるから、聴いているぶんにはスタジオ録音と変わりない。でもジャズの場合、スタジオ録音とライブ録音では天と地ほどの差があることは(どちらがいいということでなく)、ジャズ・ファンなら先刻周知のことだ。
場の空気に反応するライブの生き生き感とスタジオの音の良さをともに取り込もうとするこのやり方は、嶋津健一の希望であるとともに、発売元ローヴィング・スピリッツのプロデューサー、冨谷正博さんの方針でもあるらしい。
「音が鳴っているときに思わず拍手してしまっても、それはそれで結構です。でも、できれば音が完全に消えてから拍手してくださいね」と、開始前に冨谷さんから注意がある。
録音はまずピアノ・ソロで嶋津のオリジナル「Tender Road to Heaven」から。1週間前に亡くなった、嶋津のジャズ・ピアノの生徒であり、一緒に仕事もしていた中島梓(栗本薫)に捧げた、穏やかで美しい曲。梓先生(と僕らは呼んでいた)の魂がこの場に降りてきて、以後の演奏を見守っているように思えた。
演奏は嶋津のオリジナルが半分、残りは「シェルブールの雨傘」などミシェル・ルグランの曲と、「The Shadow of Your Smile」などジョニー・マンデルの曲を半分ずつ。
結成して4年になる嶋津健一(p)、加藤真一(b)、岡田佳大(ds)のトリオのアンサンブルは抜群にいい。CD2枚分をほとんど1テイクで、休憩をはさみ6時間ほどで録り終えてしまった。発売は秋になるらしい。
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