NY日記 5
今回はプライベートな用事で来たのでどこも見るつもりはなかったけど、半日ほどあいたのでチェルシーのギャラリー街を回る。
夏休みの時期とあって閉まっているところも多い。客も地元のアート好きというより、地方からNY見物にきた一団や老夫婦が多いような印象を受けた。
10軒近く回って、ふーん、という感じ。絵画、立体、インスタレーション、さまざまだけど特に強い印象を受けたものはなかった。僕は写真に興味があるせいか、どうしても絵画より写真に目が行ってしまう。回ったなかで3軒が写真を扱っていた。
なかでチャイニーズ・スクエアというギャラリーでやっていた「陳家剛(チェン・ジァガン?)近作展」が面白かったな。
変貌著しい中国の雑踏や風景を大判カメラで、しかもデジタル処理でパノラマにしたり合成したりしながらつくりこんだ作品が、大きなパネルで展示されている。あるいは、古い町並みや鉄道など「失われた風景」のなかに女性モデルをおいた作品。
現実そのままではなく、デジタル処理やモデルをおくことで現実を再構成しているところが、スタイルを重視するニューヨーカーの好みに合うのかも。大判カメラが微細に写し出す風景や町のディテールの圧倒的な質感と、モデルや写っている人々のどこかキッチュな印象とのちぐはぐさが、今の中国をそのまま映しているような気がした。
日本の写真界はかつてのスポーツと同じでアマチュアリズム(?)が強く、大金が動くアメリカのアート・シーンに巻き込まれることをよしとしない空気があるみたいだけど、中国の写真家はどんどんNYに進出しているという。それを実感したギャラリーだった。
あと、シルバースタインというギャラリーで有名写真家のコンタクト(と選ばれた作品)を展示していた。
ロバート・フランク、ダイアン・アーバス、ブルース・デビッドソン、エリオット・アーウィットらの代表作のコンタクトを見られたのは嬉しい。コンタクトを見ると、写真家が何を見、どう行動しているのかがよくわかる。印をつけて選ばれた作品の前後には、意外なものが映っていたりする。ロバート・ケネディ暗殺の瞬間を捉えた報道カメラマンのコンタクトにも見入ってしまった。
Comments