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July 27, 2007

『傷だらけの男たち』の音楽

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香港ノワールの傑作『インファナル・アフェア』シリーズのアンドリュー・ラウとアラン・マックの新作。うーん、期待してたんだけどなあ。

トニー・レオンと金城武、2人の刑事(元刑事)の友情と対決。男たちの過去と現在の絡み合い。ノワールな空気。『傷だらけの男たち(原題「傷城」)』は『インファナル・アフェア』と似たところの多い映画なんだけど、出来にはかなりの差がある。

その理由のひとつは音楽の使い方にあるんじゃないだろうか。この映画、最初から最後までのべつまくなしに背後に音楽が流れているような印象がある。冒頭では、クリスマスのイルミネーション輝く香港の夜景にジャズ。トニー・レオンと金城武の内面に関わるシーンでは静かなピアノ曲。そしてアクション場面などでは香港ポップス(エイベックスが金を出してるとはいえ浜崎あゆみとは)。

これは僕の勝手な感じ方かもしれないけど、画面の背後に流れる音楽は効果的に使われれば見る者の感情を揺さぶるけれど、のべつまくなしに使われると、見る者にこのショットではこう感じるようにと強い、手早くストーリーを語るための説明的な効果をもってしまうように思う。映画の細部のリアリティは、沈黙のなかでこそ生まれるというのに。

ノワールはともすると音楽を過剰に使いすぎることがあり、最近では『あるいは裏切りという名の犬』がそうだった。久しぶりに面白いフレンチ・ノワールではあったけど、もう少し沈黙が欲しいと感じた映画でもあった。今回もそう。

いまひとつは脚本の問題。なぜ冒頭で富豪を殺害した犯人を明かしてしまったのか。

もちろん、犯人や結末を最初に示してしまう作劇はありうる。高度な作劇と言っていいだろう。昔の映画だけど『ジャッカルの日』では、ド・ゴール暗殺が失敗したことが冒頭に語られるが(彼が暗殺されなかったのは誰もが知ってる)、なおかつ暗殺犯を追う刑事が少しずつ犯人との時間差を詰めていくサスペンスが見事だった。

でも、『傷だらけの男たち』では、最初に犯人を明かしたことを生かす脚本にはなっていなかったように思う。ここはやはり、金城武の私立探偵が動き回るうちに徐々に犯人像が浮かびあがるという正統派サスペンスのほうがよかったんじゃないだろうか。そうでないと、プロローグでトニー・レオンが衝動的に行動する意味も生きてこない。

香港ノワールの常連、チャップマン・トゥももう少し濃密に絡んでくるのかと思ったら拍子抜け。期待が大きかっただけにがっかりして映画館を出た。

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Comments

こんにちは。
雄さんとは結構趣味がかぶりますね。私も昨日観たのですが、期待が大きすぎたのか、正直乗れませんでした。もちろん、演出自体は相変わらず悪くないんですが、仰るように、サスペンスとして、まったくと言っていいほど緊張するシーンがなかったのです。
随分と説明的な描写が多かったように思います。事件現場で、金城武が妄想の中で犯人を直感してしまうシーンなど、パートカラーで非常に凝った作りではあるのですが、仰るように、ちょっと性急過ぎた感じがしました。
まぁそうは言っても、アンドリュー・ラウとアラン・マックには今後も期待してしまうのでしょうが。

Posted by: [M] | July 30, 2007 at 09:22 AM

こんにちは。

アンドリュー・ラウが韓国で撮った『デイジー』といいこの作品といい、部分的には面白いところがたくさんあるのに全体の印象がいまひとつなのはなぜでしょうか。『インファナル・アフェア』シリーズが3本とも見事な構成だっただけに、うーむ、となってしまいます。

『仁義なき戦い』を撮ってしまった後の深作欣二みたいなもんかと思えば納得できなくもないのですが、ハリウッド進出という話も聞くので、やはり期待は大です。

Posted by: | July 31, 2007 at 12:01 AM

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