篠山紀信と宮本隆司
天下のシノヤマと廃墟建築の写真で知られる宮本隆司を並べたのは、別に2人の写真家に共通点があるとか、比べてみようというわけじゃない。ここ数年、アート・ギャラリーが次々にオープンしている六本木は芋洗坂へギャラリー巡りに行ったら、たまたま2人の写真展がごく近くで開かれていたから。
篠山のは「TIME DIFFERENCE」(T&G ARTS、11月11日まで)。
女優・高岡早紀の12年前(モノクローム)と現在(カラー)とを組み合わせて展示している。石田えりや水沢アキでやった女優の「過去と現在」シリーズのひとつ。ちょっと高級なアイドル写真集として出版された最新刊のなかからエッセンスを抜き出し、2つの時をシンクロさせることでアートとして再構成してみせた趣がある。
そのうちの何点かは、同じポーズをした過去と現在の写真が、ひとつのフレームのなかに並べられている。モノクロとカラー。ヌードと着衣。1994年の鮮烈な肉体と、2006年の女優としての成熟と。
女性の微妙な表情(顔と肉体の)を引き出す篠山のうまさには今更ながら感嘆するのみ。
宮本隆司のは「forgotton 忘れていた」(TARO NASU GALLERY、11月25日まで)。
宮本が、解体された建築物を撮った『建築の黙示録』で1989年の木村伊兵衛賞を受ける以前の作品が展示されていた。
80年代だろうか、カナダのヒッピー・コミューン。ネガに黴が生えた愛猫らしき写真。東南アジアの植民地様式の洋館。草むらに放置された無人の館は、その後の彼の仕事を予感させる。香港とおぼしき都市の夜の屋台やフェリー。へえ、こんなスナップショットも撮っていたのか。伐採され横たえられた大木。その物質感は後の宮本の写真に通ずるものがある。
国際的に評価の高い、むしろ海外での活動が目立つ宮本の、若き日の「忘れていた」写真たちが微笑ましいね。
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